子育てしやすいまちと住まい 
押さえておくべきポイントをSUUMO編集部にお聞きしました

2022.11.25

ミキハウス編集部

上京、就職、結婚、出産、子育てなど、ライフステージが移り変わるにつれ住まい探しの「条件」は変わってくるもの。特に子育てがはじまると住まい選びも子ども中心に考えるようになるのではないでしょうか。そこで今回、ミキハウス妊娠・出産・子育てマガジンでは子育てにフォーカスした住まい探しのポイントについて、住まいに関する総合情報サイト「SUUMO」副編集長で、自身も現在3歳のお嬢さんを育てている江原亜弥美さんにお話をお聞きしました。 

江原亜弥美(えはらあやみ)
株式会社リクルートが運営する不動産・住宅の総合情報サイト「SUUMO」副編集長、SUUMOリサーチセンター研究員。現在3歳の娘を持つ母親でもあり、夫とともに仕事と家事・育児の両立中。本人曰く「家事・育児は夫とほぼ折半。家電の力を借り、ゆるくやっています」

 

子育て世帯の住まい探しのポイントはコロナ禍を経て変わりました

子育て世帯の住まい探しのポイントはコロナ禍を経て変わりました

――江原副編集長は、2019年にご出産されて約1年半の育休の後、現場に復帰されて現在、SUUMOにて副編集長をされています。子育て世帯の住まい情報についてお仕事で得た知見はもちろんのこと、私生活での当事者視点もあわせてお話をお聞きできたらと思っています。

江原副編集長(以下、江原):よろしくお願いします。今回のテーマは子育て世帯の住まい探しということですが、やはりまずポイントとなるのは共働きかどうか。購入にしても賃貸にしても、その前提があるかないかで、住まいに求めるその他の条件も大きく変わってきています。

なお弊社が実施した『2021年 首都圏新築マンション契約者動向調査』」よると、 既婚世帯の共働き比率は、2001年調査開始以来最高の74%。共働き層はこの10年で一気に増えており、諸々の社会的状況を考えると、今後子どもを生み育てようという世代は共働きを前提として住まい探しをすることになるのだろうなと思います。

あわせて仕事に対する感覚も40代と20代とではかなり違います。つまり人生における「仕事」の捉え方が違うので、そうなると当然、選ぶエリア、物件の条件も変わってくるのかなと。

――そうですよね。コロナ禍以降の2年半で生活様式、暮らし方や働き方も変わったという人も多いと思いますが、そのあたりは住まい探しにどれくらい影響を及ぼしているのでしょうか?

江原:これは子育て世帯に限らずですが、やはりリモートワークができる仕事かどうかで30代〜40代の住まい探しの条件は相当変わってくるようです。たとえばリモートワークOKの業界で働かれている方は、最寄り駅や職場までのアクセスを(以前のように)重視する必要がなくなりました。また都市部から離れて郊外を選択される世帯も増えています。

実際に2021年12月に実施した『住宅購入・建築検討者』調査では、新型コロナウイルス感染症拡大前と比べて、住宅に求める条件が変わったかを尋ねているのですが、「部屋数がほしくなった」「日当たりのよい住宅がほしくなった」との回答が多く寄せられました。

『住宅購入・建築検討者』調査(2021年12月)リクルート調べ

江原:他エリアより首都圏の方が仕事専用スペース、通信環境などを求める割合が高くなっていますが、それだけ首都圏にはリモートワークができる方が多いということでしょう。やはりリモートワーク中心の場合は、どうしてももう一部屋が必要になってきたり、広い家を求める傾向が強くなります。もちろん広さを求めると家賃も上がりますので、それで郊外に出ていこうと決断される世帯もあります。

――通勤の負担が軽減した世帯は、優先すべき事項がその他の住宅環境になっていくと。

江原:そういうことになると思います。逆に共働きでいずれもリモートワークではない場合は、夫婦どちらの通勤に便利な場所がいいのか、という判断がポイントです。一般的には、家事育児の負担や、第二子以降の妊娠期間の負担を考えると、ママの通勤しやすさを第一に考えるのがおススメです。

――たしかに本サイトの調査でも約84%のご家庭が、7割以上の家事育児をママが担っているとの結果が出ていますが、非リモートワーク✕共働きの夫婦の場合は家事育児の負担の多い方の職場に近い方を選ぶのがいいのでしょうね。

江原:勤務先だけでなく、実家へのアクセスも重要な視点かと思います。もし「お母さん手伝って!」と気軽に言える関係性であればですが、子どもが中学校に上がるくらいまでは、いざというときにサポートしてくれる“心強い味方”がいる場所に住めるとすごく安心ですよね。

子育てしやすいまちの条件/環境とは

子育てしやすいまちの条件/環境とは

――そもそも住まい探しは各世帯の状況や、働き方、価値観、どこに重きを置くかで変わってくるとして、そんな中でも子育て世帯が意識すべき“共通項”もあると思うんです。まず子育てしやすいまち・エリアについて、どのあたりを見ればいいものなのでしょうか。

江原:まず押さえておきたいのは行政サービスです。つまり子育て支援に積極的な自治体かどうか。共働きであれば保育園の待機児童数の状況や受け入れの条件は調べておきたいですね。また、子どもの医療費負担の割合も気になるところです。

――東京23区は中学生までの医療費が無料ですね。

江原:ええ、さらに2023年4月から高校3年生まで所得制限なしで医療費を無料にすると発表しましたね。全国でも多くの自治体で子どもの医療費助成があり、有料でも1回あたり数百円の負担ですが、特に幼いときはすぐに体調を崩したりするので、お金のことを気にせずに医療サービスを受けられる環境は、心理的にも助かります。

――私も都内23区在住の子育て世帯なので、医療費無料のありがたさは身にしみて感じています。診察代だけでなく処方されるお薬も無料で、たとえば肌荒れのような「放置しがちな病状」を治療したり、予防するための薬も無料で処方してもらえる。これは本当に素晴らしいことだと思います。

江原:そうですよね。私も仕事中は娘を保育園に預けているのですが、入園から半年間は、毎週のように熱を出してお迎えと通院の繰り返しでした。

わが家の場合は、徒歩圏内に信頼できる医療機関が複数あったこともよかったかなと思います。子どもはすぐにお熱も出しますし、中耳炎にもなりやすいので、自宅から徒歩10分以内の場所に小児科と子どももちゃんと診てくれる耳鼻科があるとすごく心強いですね。


――医療施設の充実度は、どうしても都市部の方が強いですよね。このあたりは本当にどこに重きを置くかなんですが、子育てのために自然の豊かな場所を選ぼうとすると、各種医療機関へのアクセスが悪くなりがちで、逆に医療機関へのアクセスはいいけど自然との触れ合いという面では劣るのが都市部だったり…。

江原:悩ましいところです。ただ病気がちなお子さんでしたら、信頼できるお医者さんのいる病院の徒歩圏内に住むのが安心だとは思います。医療機関以外も、生活利便施設が近くにあることは子育て世帯の住まい探しには重要ですよね。

――生活利便施設というとどういうものがそれにあたるんですか?

江原:代表的なものはスーパーや公園です。食材や日用品が気軽に変える環境と、子どもを遊ばせる場所、この2つはマストではないでしょうか。子育て「だけ」を考えると、駅近であることよりも、思いっきり遊ばせることのできる安全な公園があることの方が重要かなと思います。

――たしかに。歩いて5分くらいで子ども安心して遊ばせる場所があったら最高ですよね。これはうちも家選びの段階で意識はしてましたけど、実際に公園の近くに住んでみて、その利点をものすごく感じてます。なにもなくてもとりあえず公園に行けば、子どもはなにかしらの「遊び」を見つけて楽しんでくれる。公園という自由にできる場所さえあれば、遊びの天才≒子どもはいくらでも楽しめるんですよね。


江原:あと民営でも公営でもどちらでもいいのですが屋内遊戯場が近くにあるエリアはいいです。雨の日に、行く場所が見つからない場合でも、そこに行けばなんとかなる、という場所ですね。

また最近の大規模マンションですと、共用部が充実していてキッズスペースなどがある物件もあります。私が今住んでいるマンションにもありますが、すごく便利。家の中では騒音の問題もあるので飛び跳ねるのを基本禁止しているんですが、キッズルームでは子どもを自由に遊ばせることができます。

近くに公園や屋内遊戯場があること、その上でマンションであればキッズスペースまであれば、かなり日常の子育てのストレス軽減につながるのではないでしょうか。

――これもひとえに言えないかもしれないですが、マンションと一軒家、子育てに向いているのはどちらなんでしょうか?

江原:東京の場合ですと、郊外に行かない限りなかなか一軒家という選択肢を取れないかと思うのですが、マンションは騒音問題を大なり小なり気にしなければいけないので、お子さんが活発であるなら、一軒家の方がなにかと「気が楽」だと思います。庭や屋上がある一軒家なら夏場にプールも出せますし、駐車場付きなら車を持ちやすく、気軽にお出かけできます。のびのびと子育てしやすいのは、一軒家かもしれませんね。

一方、特に共働き世帯の場合は、利便性の高いマンションでの子育てもおすすめです。たとえばゴミ出し。マンションの場合、24時間ゴミ出し可の物件もあり、管理会社がきれいに管理してくれます。でも一軒家はゴミ出しの日時が指定されている地域が多く、自由にゴミ出しはできません。マンションは共用部を管理会社がきれいにしてくれますが、一軒家は自分でメンテナンスをしなければいけません。その分、マンションでは管理費や修繕積立金を毎月支払うわけですが、子育て中の忙しい共働き夫婦にとって、総合的に居心地がいいケースもあると思います。

上の子が小学校に上がるまでに定住先を決めるパターンが多いです


――子育て世帯の住まい選びのポイントのひとつとして「教育環境」というものは無視できないかなと思っていますが、このあたりについてもお話をお聞かせいただけますでしょうか。

江原:そうですね。住まい探しでも購入を決めるタイミングは、上の子が小学校に入る前が多くて、それは小学校六年間のうちに引っ越しするのはかわいそうだからと、定住先を決めるケースが多いんです。そしてその際に、やはり教育環境を見られる方も一定数いらっしゃいます。東京都心部でも私立小学校に入れようとされているご家庭はごく一部ですので、大多数は住もうとしているエリアの公立小学校を気にされているようです。

――この学区は教育環境がいいかどうか、という視点ですか。

江原:そうですね。このあたりの情報は地元の不動産会社さんがとても詳しいです。地元の小学校や中学校の雰囲気、人気の塾や習い事など確度の高い情報をお持ちだと思うので、質問してみるといろいろ教えていただけるかと思います。

――数年前、「リビング学習」が話題になり、子どもが勉強するのは個部屋ではなくて、リビングでした方が生活の中での勉強習慣がつくとか、わからないことがすぐ聞ける環境だからいいなどと言われました。そうなると個部屋はいらないのかとか、リビング学習に適した間取りや広さってどの程度なんだろうかとか、いろいろ気になるポイントが出てきます。


江原:たしかに住まいのニーズや課題はライフステージで変わってきますからね。それを考えると間取りを変えられる物件であるというのはポイントにはなってくると思います。もちろん、そんなことを気にしなくていいくらい広い物件を買えるのであればいいのですが、首都圏でそういう物件を購入しようとすると、ものすごく高い買い物になります。私たちは広さではなく、「必要なのは可変性です」とよく言っていますが、間取りをある程度、自由に変えられる物件ですと、後々に融通をきかせやすいかもしれません。

――リフォームという選択肢ですか? 都心では新築マンションは高騰しすぎて中古マンションを購入して、リフォームしようとうご家庭もありますね。

江原:ええ、そういう需要も増えていますね。可変性を考えると、中古マンションの場合おススメなのは「二重床・二重天井」構造であること。要はコンクリートスラブと内装床・内装天井との間に空間があるかどうかです。給排水管やガス管の位置を変えやすいので、リフォーム時に水回りのレイアウトを大きく変更できるんです。子どもが大きくなって、じゃあ部屋を増やそう、レイアウトを変えようというときに、選択肢が広がるのではないかなと思います。

――最後に住むエリアについて改めてお聞きします。やはり子育て世帯の多いエリアとうのは、子育て当事者が多いこともあり、子育てへの理解や寛容さがあるように思います。このあたり“住まいのプロ”としてどのように思われていますでしょうか?

江原:そのとおりだと思います。まちのなかに子育てをしている人がいる、平日でもベビーカーを押しているママがいっぱいいる。やっぱりそういうまちは多くの方が子育てをしやすいから住んでいるし、子どもと一緒に行っても楽だから遊びに来ているわけです。そこはわかりやすい指標になるかと思いますね。

逆に子どもに対してウェルカムとはいえないエリアも当然存在します。夜中まで騒がしい繁華街や交通量の多い道路が通学路にあるような場所ですと、親は心配が尽きないかもしれません。そういう部分は、実際に物件を探すときにまちを歩いて、ご自身で確認されるのがいいと思いますね。

――これから家族と暮らす住まいをどうするかは本当に大きな選択になります。もちろん「住めば都」という言葉があらわすように、仮に最初は不便な環境だと感じていても、子どもが成長したり、慣れてしまえば心地よくなり離れがたくなるもの。どんな場所に住んでも、みなさんが家族と一緒に笑顔でいられることを願っています。本日はありがとうございました。

首都圏&近畿圏 子育て環境が充実している駅ランキング TOP10


最後に「SUUMO住民実感調査2022」より、首都圏と関西の子育て環境が充実している駅ランキングをご紹介します。みなさんが住みたいと思っているまちは入っていますでしょうか?

首都圏 TOP10

※「SUUMO住民実感調査2022」リクルート調べ

1位 はるひ野(小田急多摩線)神奈川県
2位 センター北(ブルーライン)神奈川県
3位 葛西臨海公園(京葉線)東京都
4位 千石(都営三田線) 東京都
5位 センター南(ブルーライン)神奈川県
6位 西葛西(東京メトロ東西線) 東京都
7位 都筑ふれあいの丘(グリーンライン)神奈川県
8位 新浦安(京葉線) 千葉県
9位 本駒込(東京メトロ南北線)東京都
〃 南流山(つくばエクスプレス) 千葉県

関西 TOP10

※「SUUMO住民実感調査2022」リクルート調べ

1位 彩都西(大阪モノレール彩都線)大阪府 
2位 人丸前(山陽電鉄本線)兵庫県  
3位 東二見(山陽電鉄本線)兵庫県  
4位 西新町(山陽電鉄本線)兵庫県  
5位 山田(阪急千里線)大阪府 
6位 白庭台(近鉄けいはんな線)奈良県
7位 魚住(JR山陽本線)兵庫県
8位 大久保(JR山陽本線)兵庫県
9位 桜井(阪急箕面線)大阪府
10位 明石(JR山陽本線)兵庫県

この記事をシェアする

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

あなたへのおすすめ

おすすめの記事を見る

記事を探す

カテゴリから探す

キーワードから探す

妊娠期/月齢・年齢から探す