会社などで働きながらマタニティライフを送っている妊婦さんも多いと思います。仮に職場で張りを感じたら、すぐに仕事を中断して、安静にしてください。それでも張りが続くなら病院に行ってください。
仕事中に病院に行くのは気が引ける…という方
まず大切なのは妊婦さん自身のからだのことです。気にする必要はありません。男女雇用機会均等法(※1)では、事業主は妊娠した従業員の健康を守るために適切な措置を講じなければならないと定められています。これは医師が認めた場合には、勤務時間の短縮や休業が保証されるというものです。
ほとんどの母子手帳にこの制度を使うための「母子健康管理指導事項連絡カード」がついていますから、必要になったら医師に記入してもらって職場に申請してください。また日本ではこうした妊娠中の疾患にも健康保険が適用されることになっています。
日本は周産期死亡率が非常に低い国
厚生労働省が平成30年に発表した資料(※2)によると、妊娠満28週以後の1000件の出生に対する死亡率(周産期死亡率)は日本の1.7に対して、アメリカは2.9、ドイツは3.8となっています。つまり日本は、周産期の母子の健康管理が非常に手厚く行われている世界でも数少ない国のひとつなのです。
最後に吉村先生から妊婦さんにメッセージをいただきました。
「妊娠中のおなかの張りは気になるとは思いますが、生理的なものがほとんど。ちょっと横になれば治まるならあまり気にしなくてもいいです。ごくまれに注意しなければならない疾患が潜んでいることもありますので、いつもと違うようだと感じるときは迷わずかかりつけのお医者さまに相談してください。もしなんでもなかったとしても(生理的な張りだったとしても)、医者は『こんなことで病院に来るなんて』などとは決して思いません。
日本は世界でもトップレベルで、安心して出産できる国です。ですから妊婦さんは安心して妊娠期をすごしてもらいたいと思います。そして生まれてくる赤ちゃんを元気で迎えてください」
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。