リスクは? 痛みは? 無痛分娩にまつわる誤解【専門医監修】

2023.04.06

ミキハウス編集部

無痛分娩にまつわるいろんな誤解

無痛分娩にまつわるいろんな誤解

――無痛分娩に関しては実態がわかっていないこともありますし、誤解も少なくないのではないかなと感じています。たとえば麻酔についても、本当に痛みを感じなくなるまでからだに入れて大丈夫なんだろうか、赤ちゃんへの影響はないのかな、などと思ってしまう。特に過去の無痛分娩における医療事故は、麻酔が原因で起きたものという報道もあります。

岩本先生:そうした報道があると、心配になるのはわかります。医療事故は言うまでもなく大問題ですが、だからといって無痛分娩や硬膜外麻酔そのものが危険であるというわけではありません。つまり個別の事故で(それは大変遺憾なことでありますが)「技術」や「医療」自体が否定されるべきではないと考えます。

正しい管理のもと、正しい手順で麻酔をして分娩すれば、母子ともに自然分娩以上に「安全」に出産することができるのです。そもそも硬膜外麻酔はなにも特殊な麻酔ではなく、ごくごく一般的なもの。母体への影響はもちろんのこと、赤ちゃんへの影響についても心配する必要はないと言えるでしょう。

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――無痛分娩において麻酔を効かせすぎると、いきめなくなって分娩が困難になると言われますよね。分娩時に力がうまく入れられず「鉗子(かんし)分娩」や「吸引分娩」など器具分娩になることもよくあると言われています。器具を使って赤ちゃんの頭部を掴んだり、器具で吸引することで、頭の形が変形してしまうことを心配されている妊婦さんも少なくないのかなと。実際、我が家も1人目のときは、最終的に器具を使っています。

岩本先生:たしかに無痛分娩では器械分娩率が10%増加すると言われています。しかしながら、麻酔がしっかり効いていたとしても腹筋など(麻酔が効いていない場所)に力を入れればしっかりいきむことはできますし、無痛分娩でも器具を使わず分娩される方はたくさんいらっしゃいます。そもそも器具を使用することで赤ちゃんの頭の形が変わったり、傷ついたりすることはありますが、適切な方法で使用するので数日のうちに自然と治るものであり、心配はいりません。

なお通常の経膣分娩でも赤ちゃんの頭の形が変形することはよくあります。赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく、狭い産道を通るときに変形してしまうんです。これもすぐに治るものなのでご安心ください。

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――日本では自然分娩の方が安全だという認識も根強いですよね。お産は自然に任せるべきと考える方は少なくない…どころか日本ではその考えが一般的ではないでしょうか。

岩本先生:そうですね。ただ自然分娩と言っても、医療が発達する前の時代に比べれば「自然」ではないですよね。現在の自然分娩とは自然に任せる分娩ではなくて、母児が危険な状態に陥った時、適切な医療介入を行う分娩です。痛みに対して適切な医療介入を行う無痛分娩は、自然分娩のさらなる発展型なのです。

――なるほど。適切な医療介入ができる時代になり、その「適切」の及ぶ範囲を「痛み」にまで拡張したものが無痛分娩であると。

岩本先生:ちなみに2010年から2016年の間に、妊娠中から産後1年以内に妊産婦が亡くなった271例のうち、無痛分娩での死亡は14例(全体の5.2%)です。その14例の原因を詳しく調べると、麻酔が原因であったもの(局所麻酔中毒)は1例で、 そのほかの13例は、無痛分娩を行っていなくても起こりうるもの(※2)。少なくとも、無痛分娩の方が自然分娩より危険である、ということは言えないと思います。

また、のべ1万人以上の分娩を手掛けてきた私個人の経験でも、母子ともに自然分娩の方がリスクや怖さを感じることが多いです。産科施設によって帝王切開率は大きく異なりますが、自然分娩での帝王切開率の全国平均は15%程度だと言われています。それに対し、当院の完全計画無痛分娩の帝王切開率は1.2%です。医療の高度化により自然分娩が発展した無痛分娩を適切に行えば、(現状の)自然分娩よりも安全な出産方法だと私自身は考えています。

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