「紫外線の害のうち急性疾患の代表は日焼けです。ただこうした疾患は時間が経てば自然と治ることは経験したことがあれば誰でもご存知でしょう。一方、慢性的な疾患としてはシミやほくろ、皮膚がん、白内障などがあります。
目の水晶体の白濁によって視力が落ちる白内障は、高齢者の発症が多いことから長年紫外線を浴びることが関係するのではないかと言われています。ただ長期的な紫外線の影響については個人差もあり、原因と結果を断定することは非常に難しい」(七野先生)
長期的な紫外線の影響――特に皮膚がんについては個人差もさることながら、地域間、人種間でも大きな差があると七野先生。たとえば世界でもっとも皮膚がん発生率の高い国のひとつと言われるオーストラリアでは、70歳までには3人に2人が発症し、毎年多くの方が皮膚がんで命を落としています。
皮膚がんの最大の原因は過度に紫外線にさらされてしまっていることと言われています。
「皮膚がんについてはさらなる注釈が必要です。そもそも日本人など有色人種では皮膚がんの発症率が低い。もちろん全くないわけではないですが、紫外線のほかにも原因があることも分かっていますので、そこは知識として知っておいた方がいいかもしれません」(七野先生)
紫外線対策のやりすぎはビタミンD欠乏症の要因にもなり、まったくやらなければ大小さまざまな皮膚への疾患が起こりうる。では、“バランスのいい紫外線対策”とはどのようなものなのでしょうか。
環境省が発行する「紫外線 環境保健マニュアル」(※2)では、以下のような紫外線対策が奨励されています。
特に乳児については、「赤ちゃんの日光浴で気をつけること」として長い間日光に当てないようにし、日差しの強い9時~ 15時頃を避け、朝夕の涼しい時間帯に外出する。さらにベビーカーのカバーなどで強い日差しが直接当たらないように工夫することなども付け加えられています。これは、赤ちゃんが大人と比べて皮膚が薄く、紫外線の悪影響を受けやすいため。また雲に覆われた薄曇りの日でも、紫外線は80%以上透過しているので、くれぐれも油断してはいけません。
ビタミンDを生成するために必要な日光浴の時間は、地域や天候、季節によって大きく異なります。一般的には15~30分が目安と言われますが、外出にまだ慣れていない小さな赤ちゃんの場合は、まず1日5分くらいから始めるのがよいでしょう。
「長い時間直射日光に当たらないようにすることが、紫外線の害を受けないための最良の対策といえるでしょう。ただ、紫外線の強さは住んでいる地域や季節で違いますから、どの程度が許容範囲かはママ・パパの経験を生かして考えていただくのが一番確実かもしれません。そして紫外線がビタミンDをつくり出す大切な役目を持っていることも、無視してはいけません。紫外線についての正しい知識を身につけて、赤ちゃんの健康を守ってもらえるといいですね」(七野先生)
いかがでしたか?紫外線対策をしつつ、気持ちのいい日には日差しを適度に浴びながら、赤ちゃんと一緒にお出かけを楽しんでくださいね。
- <参考資料>
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※1「オゾン層保護(ウィーン条約とモントリオール議定書)」(外務省HP/2018年12月19日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/ozone.html -
※2「Be SunSmart」(Cancer Council Australia/2018年)
https://www.cancer.org.au/preventing-cancer/reduce-your-risk/be-sunsmart.html
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※1「オゾン層保護(ウィーン条約とモントリオール議定書)」(外務省HP/2018年12月19日)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 小児科医師。専門分野は小児血液腫瘍学、小児がんの子どもの長期フォローなど。