非認知能力を育むために やってしまいがちな親の“NG行為”とは!?

2023.06.08

ミキハウス編集部

用意しすぎないのが幼児教育の鉄則

用意しすぎないのが幼児教育の鉄則

――そもそも、乳幼児期に習得できる能力やスキルは、しばらくすれば誰でも身に付けられることが多いと言いますよね。それよりもママ・パパとすごす日常の中に、「学び」の機会がたくさん散りばめられていることを、もっと信じていいと。

浜口:はい。ただ、お母さん・お父さんは毎日忙しい方が多いですよね。だから時間が取れるときは一緒にすごして、子どもの様子を見ながら「今、この子はどんな気持ちなのかな」、「何をしたいのかな」と感じていただきたいです。そういうことの繰り返しが、子どもの中にも「大人のうれしい顔がみたい」、「ママ(パパ)、なんか元気なさそうだな、どうしたのかな、何かしてあげたいな」という気持ちをだんだん育てていきます。それが絆だし、共感力なんですね。

――ママ・パパは子どもがやりたそうなことを見つけてあげることが大切になりますか?

浜口:う~ん、そこがまた難しいところですけど、あまり肩肘張らないでいただきたいと思うんです。十分すぎるお膳立てをすると、子どもはすぐ飽きてしまいますし。用意しすぎないというのは幼児教育の鉄則。「これが面白いよ」「きっと役に立つよ」と与えていては、子どもはそれなりには楽しんでも、夢中になって遊ぶというわけではないのかなと思います。

子どもが自分で興味のあることを見つけて「こうしたらどうなるかな」、「もっとやってみたい」と目を輝かせて何かに取り組むようになるには、たくさんの無駄に見える時間が必要です。本当の「非認知能力」を育てたいなら、子どもが何かを見つけるまで待ってあげなくていけません。

非認知能力を育むために やってしまいがちな親の“NG行為”とは!?

浜口:日本の保育現場では「見守る」がキーワードなんです。話しかけたり行動を起こしたりする前に、一歩下がって「見守る」。その時間をおいてみると、案外子どもが思いがけないことを言ったり、やり始めたりします。そんなとき「あー、待っててよかった」と思うことがよくあります。

でも今は見守らない大人が多すぎるかもしれない。そもそも「見守る」は、放っておくのとは違うんです。放っているように見えても、なんとなく子どもの様子に気を留めている。そういうディスタンス(距離)をとっていないと、その子どもの「らしさ」のようなものは見えてこないし発揮されない。じれったくなっても、手を貸したいと思っても、一度待つんです。子どもが自分自身の力と向き合えるように。必要な時には子どもの方から助けを求めに来ます。

 

「自分でやりなさい」を言いすぎてませんか?

「自分でやりなさい」を言いすぎてませんか?

――子どもの「非認知能力」が育ちにくい環境というのはありますか?

浜口:ベテランの幼稚園の先生に伺ったのですが、最近の子どもたちはやってもらう経験が少ないように見えることがあるそうです。昔は靴の紐がほどけたらお母さんが結んでくれるものだった。できないことがあるとお母さん・お父さんが助けてくれたんですね。でも今は小さなうちから「自分でやりなさい」と言われる。

片付けもそう。親子一緒に片付けをした経験もないのに、「片付なさい」と叱られる。でもやったことがないのにできるわけありません。さきほどの「待つ」というお話と矛盾するようなのですが、最近は「自立、自立」と言われすぎているような気もします。「自分でできることは自分で」というのも程度問題です。まだ一人ではとてもできそうもない子どもを前にして、一人でやりきるのをじりじり待つ必要はないのです。

非認知能力を育むために やってしまいがちな親の“NG行為”とは!?

浜口:身の回りの支度や片付けなどの生活習慣、また一定の技能を必要とするような行為は、はじめはちゃんと大人がモデルを示してやる。そうやって助けてもらう経験がないと「自立」には向かわない。矛盾しているようですが、ちゃんと依存する経験は大切。そこでちゃんと助けてもらうと人は自立したくなる。

――助けてもらう経験を経て、自立へと意識が向かうのですね。

浜口:何度もサポートしてもらっているうちにできるようになるのが、発達していくということなんです。有名な発達心理学者のレフ・ヴィゴツキーが唱えた「発達の最接近領域」という概念があって、簡単に言うと「自分ではできないけれど、誰かの協力があればできるかもしれない領域」という意味です。

でも、たとえば「絵本を読んで」というような要求に対してして「あなたはもう字を読めるでしょ」というのは、ちょっとおかしいと思います。絵本とは一緒に読むのが楽しいものです。文字は読めても読んでもらいたいことがよくあります。「できる、できない」では割り切れない世界。子どもがその時どういう気持ちで「読んで」と言っているのか、感じてほしいと思います。

子どもが今できることから次の段階に進むためには、お母さん・お父さんの支えがあって、子どもがこれなら大丈夫、自分でやれると思う時が来るのを待つことが大切なんですね。やってもらう喜びを知らない子は「非認知能力」も育ちにくいのではと言われています。

――やってもらう喜びを知らせることが大切なんですね。

浜口:やってもらう喜びを知っていると、人に手を貸すことも自然にできるのだと思います。たとえば、幼稚園の保育室で先生が「〇〇ちゃん、お部屋が散らかっていて歩くの危ないから、そこのブロック片付けるの手伝ってくれる?」と近くにいる子どもに声をかけた場合に、「ぼくがやったんじゃないもん。自分のことは自分でやるんでしょ」と言って、ブロックで遊んでいた当の子どもを探しに行くというようなことが起こります。「自分のことは自分で」ばかり強調されると、こういう行動を生んでしまうのかなと思います。本当の自立とはなにか、考えてみる必要があります。

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