いくら左利きに歴史上の偉人が多かろうと、スポーツや音楽では有利に働くことが多かろうと、日常生活で不便なことが多いのであれば、そんな不便や苦労を少しでも軽くしてあげたいと思うのが親心。
もし矯正を考えているのであれば、無理のない範囲で行うべきだと山中先生。
「無理な矯正は子どもにとって大きなストレスになるので、嫌がるならやめておいたほう
がいいと思います。また始めるならその動作に慣れていない小さいうちにしてください」(山中先生)
「ただ、左利きは個性のひとつ。矯正よりもメリットを伸ばしてあげてはどうでしょう。もちろん、矯正するかしないかはそのご家庭の考えひとつではありますが、左利きにもメリットはありますのでそのことは忘れないでほしいと思います」(山中先生)
右利きには、日常生活を送る上で不便に感じることがないという「メリット」があり、左利きにはフレキシブルに両手を使うケースが多くなることで、脳の活動が促されるという「メリット」があります。どちらが利き手であっても、デメリットよりもメリットに目を向けた方がいいのでは、という山中先生のアドバイスは、わが子の個性を大切にしてのびのびと育てることが何よりも大事だとする「子育ての基本」に立ち返らせてくれる考えと同じなのかもしれません。
右利きであろうが、左利きであろうが、その子が持って生まれた能力を最大限に伸ばし、自分らしく生きる力につなげていってほしい。その気持ちを持って、子どもに接したいものですね。
- <参考資料>
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- ※1「胎向、生後3日以内の頭部の向きと、乳児期の手の活動の関係」(橘廣・岩砂真一 2001 心理学 研究, 72, pp.177-185.)

- 山中健太郎(やまなか・けんたろう)
- 昭和女子大学生活科学部健康デザイン学科 教授
東京大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科にて博士(教育学)を取得。専門は身体教育学。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院助教、昭和女子大学准教授を経て、2017年より現職。現在、「両手協調動作における利き手・非利き手の役割に関する研究」に取り組んでいる。子煩悩な一児のパパでもある。