体外受精は、排卵直前の女性の体内から取り出した卵子を、体外で精子と受精させる治療方法のことです。受精後、順調に発育した「良好胚」を体内に戻すと妊娠率が高くなるため、だいたい2~5日間、体外で培養させた胚の中から良いものを選んで、腟から子宮内に胚移植します。
一方、顕微授精は体外受精の方法のひとつ。採取した卵子と精子を顕微鏡で確認しながら、受精の手助けをする形で妊娠に導く方法となります。通常の体外受精では、受精が成立しなかったり、成立が見込めない場合に行われます。
一般的にはパートナーから提供のあった精子の中から、正常な形かつ動きのいい“良好な精子”をひとつ選びます。そして、それを卵子に注入することで、受精の最初のステップを乗り越えるというわけです。なおどんなに良好な精子を注入したとしても、すべてが受精卵として発育を進めるわけではありません(顕微「受」精とは呼ばず、顕微「授」精と表現されるのは、そのためです)。
体外受精、顕微授精のいずれも最初に採卵手術を行います。排卵の直前に卵巣から卵子を取り出す手術で、細い針で卵巣の中にある卵胞を穿刺して、卵子を採取します。
「採卵手術の前には、数個から多くても10個前後の成熟卵を採るために、排卵誘発剤を1~2週間ほど使用することになります。クリニックで注射をする場合と、ご自宅で自己注射をする場合とがありますが、自己注射の場合でも、卵胞の成長具合やホルモン値を測定するため、何度か通院することになります。排卵誘発剤の反応は個人差が大きく、人によっては強い副作用が生じることも。副作用が酷い場合は、採卵しても胚移植を回避、全胚凍結して、その後、子宮の着床条件を整えてから移植することがあります」(吉村先生)
採卵手術は、一般的には静脈麻酔下で行います。また採卵手術後には、着床に適した子宮内膜を作るためにホルモン治療を行います。子宮内膜の状態がよくなければ、全胚凍結することになるのが一般的です。