日本ではだいたい5組に1組、すなわち20%近くのカップルが悩みを抱えていると推定されている不妊。不妊とはどういう状態を指し、どのような原因があるのか。またどんな人がなりやすいのか――気になる不妊の話を、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に伺いました。
日本では5組に1組のカップルが不妊に悩んでいます
WHO(世界保健機構)は不妊症を「妊娠を希望する男女が避妊しない性交を12か月以上続けても妊娠しない場合の男性、または女性の生殖器系の疾患」と定義しています。
「健康なカップルの場合、避妊しないで月5~6回程度の平均的な性生活(日本の場合)を送っていれば、90%が1年以内に妊娠するというデータを基にして定められたものです。最近、不妊症の割合は増加していて、日本では妊娠を望むカップルのうちの20%近くが不妊の悩みを抱えていると推定されています」(吉村先生)
ちなみに自然妊娠が成立するメカニズムを簡単に紹介すると以下のとおりです。
①卵巣から卵子が排卵される。
②卵子と精子が卵管内で出会い受精。
③受精卵が卵管内で成長しながら子宮に向かって移動。
④子宮に到達した受精卵が子宮内膜に着床。
これらの過程がすべて順調に進行することが必要。つまり、あらゆる要素がタイミングよく揃わなければ妊娠は難しいともいえます。
そのため健康上は何の問題もない女性と男性でもなかなか妊娠しないこともあります。吉村先生によると「男性か女性、どちらかに原因が見つかるものもありますが、約2割は原因がわからないんです」といいます。
“不運な偶然”が重なって、なかなか妊娠しないというケースも少なくないそうです。
「一般的に、もっとも女性が妊娠しやすい年齢は、20代とされていて、年齢が上がると、徐々に妊娠はしづらくなります。そして35歳をすぎたあたりから妊孕(にんよう)力は低下しはじめ、45歳前後になるとたとえ排卵や生理があっても自然妊娠可は難しくなります」