不妊症とは、なんらかの治療をしないと自然妊娠する可能性がほとんどない状態を指します。冒頭に記したように、WHOでは2009年から不妊症を「1年以上の不妊期間を持つもの」と定義しておりますが、結婚年齢が高くなった日本では、女性の年齢が高い場合には、不妊期間が1年未満でも、より早期に検査と治療を開始したほうがよいという考えが一般化してきています。
どんな人が不妊症になりやすい?
女性に以下のような症状がある場合、6か月程度妊娠しなかったら病院を受診してもよいいと考えられています。
〈月経の異常がある〉
「月経の間隔が長い(39日以上あく)方、逆に短い(24日以内に来る)方は排卵をしていないことが多くあります。月経周期の異常がある方は不妊症のリスクが高いので早めに受診するとよいでしょう」(吉村先生)
また月経の量が極端に多い、あるいは長い(8日以上)方は子宮筋腫の疑いもあります。逆に月経の量が極端に少ない、あるいは短い(2日以内)方は排卵していないことも考えられます。このような症状がある方は、不妊症のリスクが高いそう。月経の際の痛みが若いころに比べてどんどん強くなっている方も注意が必要です。
〈性感染症・骨盤腹膜炎にかかったことがある〉
「クラミジアや淋菌などの性感染症にかかったことがある、また骨盤腹膜炎を起こしたことのある方などは、不妊症のリスクが高まります。なかでも、手術後に腹膜炎やイレウス(腸閉塞)を起こしたことのある方は特に注意が必要です」(吉村先生)
〈子宮筋腫・子宮内膜症を指摘されたことがある〉
「いずれの場合も、健康診断で発覚したことがある場合は、早めに受診してください。ちなみに子宮内膜症の患者さんの約半数は不妊症を合併し、不妊症患者の約25~50%に子宮内膜症が診断されるといわれています。また子宮内膜症によるチョコレートのう腫がある場合、卵子の老化が年齢より進むこともあるといわれています。
診断されたことはないけれども、性交時に痛みが出てきた方なども子宮内膜症の可能性があります。子宮内膜症だと妊娠できなくなるわけではないのですが、妊娠率は下がるといわれています」(吉村先生)
〈年齢が35歳以上〉
「先ほども申しましたが、女性の妊娠率の低下は35歳をすぎると進み、40歳をすぎるとさらに加速します。これは、加齢による卵の質の低下によるもので、どんなに健康であっても不妊になる確率は高まるため、女性の年齢が35歳以上のカップルが妊娠を望む場合は、早めに専門医に相談してください」(吉村先生)
一方で、男性側に不妊の原因があることも少なくありません。どのような症状があると、男性不妊を疑うべきなのでしょうか?
〈睾丸の大きさ、柔らかさ〉
睾丸が小さくなったり、柔らかくなったりした人は精液所見が悪化している可能性があります。
〈睾丸の上にコブがある〉
睾丸の上に複数の血管のコブ(精索静脈瘤)がある人も要注意。精索静脈瘤は左側に多く、立位でお腹に力を入れた状態だと確認しやすいです。
〈脱腸の手術を受けたことがある〉
子どもの頃に鼡径ヘルニア(脱腸)の手術を受けた人も注意が必要です。場合によっては手術によって、精子がうまく通らなくなっている可能性があります。また睾丸の横に位置する副睾丸が腫れあがる副睾丸炎や、前立腺炎などにかかったことがある人も、精子が通りにくくなっている可能性が考えらえます。
〈おたふく風邪にかかった後、睾丸が腫れた人〉
睾丸炎により精子を造る力が衰えている可能性があります。おたふく風邪にかかわらず、高熱が続いた人、とくに睾丸付近に痛みを感じたことがある人も、睾丸の働きが悪くなっている可能性があります。
〈抗癌剤治療や放射線治療を受けたことのある人〉
抗癌剤を使うと、治療終了後、長期間経過した場合でも精子がうまく造れなくなってしまうことがあります。
〈不健康な生活を送っている人〉
肥満や喫煙、睡眠不足、不規則な食生活なども精液の状態に影響する可能性があります。