リスクは? 痛みは? 無痛分娩にまつわる誤解【専門医監修】

2023.04.06

ミキハウス編集部

アメリカ73.1%、フランス82.2%、イギリス60%――この数字は2016年当時の、各国の無痛分娩の普及割合を比較したもの(※1)。対して日本はわずか6.1%。2020年までに、8.6%まで上昇していますが、欧米各国と比べると無痛分娩は少ないままです。

なぜ日本では無痛分娩が「当たり前」にならないのでしょうか? その理由や医療現場における課題について、『出産に「痛み」はいらない』(幻冬舎)の著者で数多くの無痛分娩を手掛ける産婦人科医の岩本英熙先生にお話を伺います。聞き手は、自身の妻が二人の子をいずれも無痛分娩で産んだマガジン編集部のIです。

 

「無痛分娩なのに痛かった」という人が多いのはなぜ

「無痛分娩なのに痛かった」という人が多いのはなぜ?

――無痛分娩の体験談をお聞きすると、痛みをほとんど感じなかった人もいればそれなりに痛みがあったという方もいます。実際、うちの妻も無痛分娩を2度経験しており、1度目と2度目は違う産科で産んでいるのですが、いずれも痛みがないわけではなく、特に1度目はそれなりの痛みもあったと本人から聞いています。

岩本先生(以下、岩本):そもそも無痛分娩とは硬膜外麻酔を使い陣痛の痛みを緩和しながら、分娩をすることを指します。無痛分娩でも痛い思いをされた方は、麻酔が十分に効いていないことが原因と考えられます。

Iさんの奥さんが経験した無痛分娩は、いずれもそれなりに「痛み」があったということですが、日本ではスタンダードな無痛分娩だと思われます。つまり「無痛分娩」というよりは「和痛分娩」、あるいは「減痛分娩」と言う方が、妊婦さんからすればしっくり来るかと思います。現状で言いますと、完全に痛みを感じない状態まで麻酔を十分にかける産科は少ないんです。

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――妻の場合、痛くなったら自らで麻酔を入れられるよう、分娩室でボタンを手渡されたのですが(押したら自動に投与される仕組み)、はじめての経験であったため「どの程度の痛さでボタンを押していいかわからなかった」とも漏らしていました。結果、「思ったより痛かった」とも。

岩本先生:よく聞くエピソードです。陣痛がはじまり、子宮口が4−5センチ開いてから麻酔を開始するようなクリニックも少なくありません。そのタイミングで入れて「痛い」という結果になるのはある意味当然です。

私見になりますが、無痛分娩は完全に痛みを取り除くことが理想です。そのためにはしかるべきタイミングで、十分な量の麻酔を入れること。そして最初から最後まで痛みをなくすには、自然に陣痛が来るのを待つのではなく、計画的に陣痛を起こすことが必須になってきます。つまり、お産を完全にコントロールすることが重要です。

――お産を完全にコントロール…そんなことできるんですか?

岩本先生:可能です。ただし、それを実施できる高度な医療技術を有する産科は極めて少ないのが現状です。実際、私が院長を務める「スワンレディースクリニック」(東京都北区)では、出産日も計画通りに、完全に痛みのない「完全計画無痛分娩」を掲げています。日本では「完全無痛分娩」を掲げているクリニックはほとんどありません。

――ちなみに完全無痛ではない、現状の“スタンダートな無痛分娩”の痛みって、どれくらいのものだと考えればいいのでしょうか?

岩本先生:あくまで目安ですが、自然分娩の痛みを10とすると3くらいの痛みがあってもおかしくはありません。それでも一般的な自然分娩に比べれば痛みも格段に少ないですし、産後のダメージも抑えられるので母子にとって安心できる出産方法だと思いますよ。

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