不妊治療ってなに? 手術は? 体外受精と顕微授精の違いは? 専門医に聞きました

生殖補助医療が実を結ぶ確率

生殖補助医療が実を結ぶ確率

ちなみに2017年に、生殖補助医療を用いて分娩し出生した子どもの数は56,617人。つまり日本では約16人に1人が生殖補助医療で出生していることになります。

もっとも生殖補助医療をすれば、年齢に関係なく赤ちゃんがもうけられるわけではありません。治療を受けた女性を年齢別でみると、妊娠率そして生産率(赤ちゃんが産まれる割合)は若い年齢では高く、年齢が高くなるにつれて低くなっていきます。

「治療あたりの生産率でみると、女性の年齢が32歳ぐらいまではほぼ一定で、約20%の生産率がありますが、35歳前後より高齢になると徐々に下降。1つ年齢を重ねるごとに、生産率は約1%下がっていき、37歳からはさらに加速し1年で約2%も下降していくことがわかっています。

なお日本産科婦人科学会の2017年の調査によると、39歳では治療開始周期あたりの生産率は11.5%、40歳で9.3%、さらに44歳で1.8%と急激に下降していきます。現代の生殖補助医療を持ってしても、女性が40歳以降になると赤ちゃんが生まれる確率はかなり厳しくなってくることがわかります」(吉村先生)

ART妊娠率・生産率・流産率 2017

(日本産科婦人科学会 ARTデータブック2017より)

妊娠率や生産率が年齢とともに低下していく最大の理由は、「卵子が年をとること」と吉村先生。そして仮に妊娠できたとしても、その後、流産してしまう確率も年齢が高くなると上がってくるそうです。

「流産率は、33歳ぐらいまでは15〜20%で推移しますが、34歳から徐々に上昇し37歳ぐらいからは急激な上昇していきます。なお40歳になると33.6%、43歳は49.3%と妊娠したとしてもほぼ半分のケースで流産してしまうとも言われています。生殖補助医療は、年齢がその“成績”に大きく影響するのです。ですから、生殖補助医療を受ける場合でも、可能な限りより若い時期に受けることが大切になってきます」(吉村先生)

その一方で、最近では将来の妊娠に備えて、すぐに妊娠・出産の予定がない場合でも卵子を採取して凍結保存する「卵子凍結」が注目されています。妊娠率や生産率、流産率の低下の主な原因は女性の加齢=卵子の劣化にあることから、若い時期の卵子を採取して凍結することで将来の妊娠・出産につなげることを目的としたものです。

実際、若い時期の卵子を凍結していれば、「40代でも50代でも妊娠・出産はできます」と吉村先生。ただし、そこには知っておくべき事実もいくつかあるといいます。そこで次回の記事では、今話題の「卵子凍結」をテーマに詳しくお話をお聞きしたいと思います。

不妊治療ってなに? 手術は? 体外受精と顕微授精の違いは? 専門医に聞きました

参考:厚生労働省 「不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書」

 

【監修】吉村泰典(よしむら・やすのり)
慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医

1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。

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