【小児科医・高橋孝雄の子育て相談】
多様性社会、包摂する社会とは 「違い」を意識する子育ての大切さ

小児科医 / 高橋孝雄先生

お母さんとお父さんの“役割”は違っていていい

お母さんとお父さんの“役割”は違っていていい

高橋先生:最近の(日本での)ジェンダー平等の議論を見ていると、生物学的に存在する「性差の力」を認めることも差別に含まれる、と考える意見も散見されるように感じています。そのような意見の意図を理解しつつも、子育てにおけるお父さんとお母さんの“役割”は違っていた方がいい、と僕は考えています。

例えば、子どもがお父さんにこうあって欲しいと望むことと、お母さんへの思いとは違うのが自然なのではないでしょうか。だから子どもとの接し方、距離感だってお父さんとお母さんで違っていていい、そう思っています

その考え方自体が古い先入観、決めつけであり、差別じゃないかと感じられる方がいるのも良く分かります。でも少なくとも僕にとっては、これは差別ではない。お父さんとお母さんは「どこかが違っていて、そこがいい」と思うのです。そこに差別意識はもちろんありません。

I:このあたりはすごくデリケートな議論ですよね。「お父さんの役割とお母さんの役割には違いがある」という表現が、男女の“役割”についての固定的な観念ととられてしまうと、それは性差別的だということになるのでしょう。

高橋先生:もちろん、その通りですね。男女、父母の“はたらき”に対する評価や扱いが差別的であれば問題だと思います。お伝えしたいのはそういうことではなくて、お父さんとお母さんは生物学的に違うのだから、同じように振る舞う必要もないということなんです。

裏を返せば、同じように振る舞うことを求める風潮があるように僕は感じています。もちろん、男女の家事分担、育児分担に関する固定観念を排除し、公平な分担にしようとすることに異論はまったくないですし、そうあるべきだと思っています。

【小児科医・高橋孝雄の子育て相談】 多様性社会、包摂する社会とは 「違い」を意識する子育ての大切さ

高橋先生:生物学的な性別(sex)の違いはとても大きいものであることを理解していただきたいんです。男女は明確に異なり違うわけで、それは医学的にも否定しえないできないものです。そもそも男女が生物学的に違わないと人類は滅びますからね。それと同時に、ジェンダー平等はとても大切なことなんですが、生物学的な性別(sex)の違いも同様に大切なのです。

【小児科医・高橋孝雄の子育て相談】 多様性社会、包摂する社会とは 「違い」を意識する子育ての大切さ

高橋先生:例えば、子育てでも「男の子なんだから我慢しなさい」とか「女の子なのにそんな言葉遣いは駄目」という言い回しは差別的だよね、というのが最近の風潮だと感じています。でも、男が男であることも、女が女であることも、とても大事なんですよ。この感覚は、とても難しいことですが、実は非常に大切だと思っています。

つまり差別は良くないけど、違いはあった方がいいんです。だって違うんですから。そして男女の生物学的な違いって、生物の基本であり、決して小さな差異ではありません。

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