そして、専門家の処置を仰ぐと同時に必要なのが、お母さん本人の環境改善。出産に伴う急激な変化がストレスとなって発症するのが産後うつなので、そのストレスの原因を取り除く、もしくは緩和することができれば症状は回復します。核家族化が進み、お母さんがひとりで赤ちゃんの世話をする大責任を背負いこまねばならなくなっていることが、産後うつが増えている大きな要因。宗田先生は、「少しでも多くの人に、精神的に押しつぶされそうになっているママへ関心を持ってもらう環境作りが大切」だと指摘します。旦那さんをはじめとする家族は、お母さんを気遣い、以下のようなサポートを心がけましょう。
たとえば、
●ママがゆっくりとお風呂に入れるように、旦那さんが赤ちゃんの面倒をみてあげる
●毎日頑張っているママに、常に「大丈夫?」「何か手伝えることはある?」と言葉をかけてあげる
●おじいちゃんやおばあちゃんに赤ちゃんの世話を頼んで、少しの時間、ママに息抜きをしてもらう
また、ママ自身も同じ時期の子どもをもつママと仲良くなり、情報交換したり、おしゃべりを楽しむ時間を持ったりすることも有効ですし、信頼できるベビーシッターさんを活用して、上手に息抜きの時間を作ることも必要です。
産後うつになるタイミングは人によってバラバラで、出産直後すぐに症状が出る人もいれば、産んでから半年以上も経ってからという人も。また、1人目の時にはならなくても、2人目、3人目の時になるということも珍しくありません。どちらにせよ、ママたちは何らかの形で必ずSOSサインを出しています。周囲の人々に求められるのは、そのお母さんのサインを見逃さすに気づいてあげること。気づいてあげられないと、お母さんはどんどん自分を追い込み、うつ症状が重くなってしまいます。気づいたときには、重度の症状を発してしまい、回復にも時間を要するということになりかねません。
お母さんが元気でいることが、赤ちゃんの幸せな環境づくりの基本。そのことを忘れずに、旦那さんをはじめとする家族は、ママが抱えるストレスを解消できるように行動しましょう。
※本記事は「産後のお母さんの精神的なケアをしてくれる機関がほとんどない現状」について問題提起することが目的であり、産婦人科や精神科への否定的な意図で記事を掲載していないことをお知らせいたします。
【プロフィール】
宗田聡(そうだ・さとし)
産婦人科医/「広尾レディース」院長
筑波大学卒業後、筑波大学講師、Tufts大学(米・ボストン)遺伝医学特別研究員を歴任。2003年、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)を務めた後、広尾レディースを開業。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師としての顔も。著書に「31歳からの子宮の教科書」(ディスカバー・トゥエンティワン)、「産後ママの心と体をケアする本」(日東書院本社)、「産後うつ病ガイドブック(訳)」(南山堂)など。
【関連リンク】
広尾レディース
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