準備が必要なのは“新生活”を始めるわが子を見守る親も一緒。ママやパパが不安でいっぱいだと、子どもも安心して保育園に行くことはできません。どのように子どもや保育園、そして保育士さんと接するべきかについても考えておく必要がありそうです。
そこで、前出・宮里先生からこんなアドバイスをいただきました。
「入園式が終わったら、みんなそろって一斉にスタートできるわけではなく、一人ひとりにその子なりのスタートラインがあります。初めてのことへのアプローチの仕方やお友だちとのかかわり合い方は個人個人違うもの。物怖じしない子もいれば、見ているだけでなかなか輪に入れない子もいる。それが個性なんです。みんなと同じようにできないからと、子どもの背中を押すことはありません。気長にじっくりと見守ってあげれば、子どもは自分なりのやり方を身につけます。そうやって自分なりのやり方を、自分で身につける経験は大人になってから役に立つんです」
続けて、お茶の水女子大学こども園施設長の私市(きさいち)和子先生にもお話を伺いました。私市先生は、長年にわたって、たくさんの子どもや親御さんと接してきた経験から、ママやパパに対して「保育園を信じて、密なコミュニケーションを心がけて欲しい」と訴えます。
「私自身もかつて子育てをしたので、保護者の方の不安はよく分かります。でも心配ばかりしていると、子どもに伝わります。朝、お母さんと別れる時に子どもが泣いてたからって、一緒になって不安にならないで。保育士はプロです。まずは保育士や保育園を信用してください。そして、心配なことがあったら、何かを疑う前に保育士に相談してみてください。しっかりとコミュニケーションを取っていれば、大抵の問題は解決されるはずです。また、ママやパパが保育士さんと仲良く話している姿を見るだけでも、子どもたちは安心できるものですよ」(私市先生)
東京都に住む40代のママBさんも、保育士さんを信頼して、密にコミュニケーションを取ることの大切さを実感しているひとり。子どもの入園と同時に仕事に復帰し、育休中の毎日とは生活リズムが激変。怒涛のような毎日を保育士さんに支えられて乗り越えられたと言います。
「予想していたことでしたが、復帰当初は仕事が大変で……毎日、疲れ切ってお迎えに行っていました。ただ、先輩ママでもあった保育士さんは、いつも笑顔で待っていてくれて、『がんばりすぎないでくださいね』と声をかけてくれたんです。子どもを預ける以上は信頼しようと思ってはいましたが、本当にステキな方で助かりました。そうそう、彼女は息子の成長を連絡ノートにていねいに書いてくれて、それ読むとどんなに疲れていても、『がんばろう!』と思えたものです。連絡ノートは今でも私の宝物。いい保育士さんに巡り合えて、幸せでした」(Bさん)
1日の大半を保育園ですごすようになっても、子どもの笑顔が一番輝くのは、大好きなママやパパとすごす時間。だからこそ保育園以外の時間を大切にすることが大事だと宮里先生と私市先生は口をそろえて言います。
「朝の登園時に必ず回り道をして連れてくるお父さんがいました。子どもが工事現場でショベルカーを見てから保育園に行きたいというので、つき合っていたんですね。時間にして5分ぐらいですが、それがとても大切なことなんです。子どもの知りたい気持ちや興味につき合うこと。そのひと時は、子どもの可能性を育てるし、それがあることで園内での生活もスムーズにいくものです。つまり保育園での生活以外の時間を充実させることも大切なんですよね」(宮里先生)
「毎朝子どもを急かしながら、慌ただしく連れてきて、さっといなくなってしまうお母さんもいるけれど、ちょっとだけゆったりした気持ちを心がけて、『お母さんはお仕事に行ってくるね。○○ちゃんも保育園でいっぱい遊んでね』と笑顔で話しかけてあげてください。その一言だけで、まだ言葉をしゃべれない小さな子どもたちでも、園での一日を穏やかな気持ちで始められるものです。そのような子どもの気持ちに寄り添う小さな時間の積み重ねが、いい親子関係を作っていくのだと思いますよ」(私市先生)
いかがでしたでしょうか。この春、小さな足で新しい生活の一歩を踏み出す子どもたちを、準備万端整えて、精一杯応援してあげたいですね。また、保活が終わっていないご家庭の方もぜひ、入園が決まる前に、役割分担や通園方法など、ご夫婦でいろいろ相談しあってください。保活が終わってホッとしているうちに準備が進んでいない……なんてことになりませんように。備えあれば憂いなし、ですね。