子どもを受け止めて、そして子どもが自発的にやっている行動や遊びをやめさせたり、口出ししたりしない。そういう大人の姿勢がアクティブ・ラーニングの力へと繋がっていくことのようです。
宮里:幼児期にこそ、大事なものが育まれています。そこで育まれる「学びに向かう力」は、幼児期から生涯にわたる教育の一本の柱にもなります。幼児教育は、以前から体験に基づく指導を大切にしてきました。それが(来年から導入される)アクティブ・ラーニングで、「いかに自分なりの学び方が必要か」といわれるようになったわけですね。そういう意味では、体験型の幼児教育はもっとさまざまな形に展開していくだろうと思います。
————自分で気づいて発見していくって、とても大切なことですよね。
宮里:そのとおりです。以前、お茶の水女子大のシンポジウムで理系コースを選んだ女子高生に「理系への興味が芽生えた時期」についてアンケートを取ったら、大半が幼児期と答えたそうです。つまり、モノが変化することとか、植物は美しいという体験をして、理系への興味が生まれるのは、幼児期に多いのです。
————興味深いお話です。幼児期の体験から、それが後々の学習意欲につながっていくということなのかもしれませんね。
宮里:先日、当園の保護者の方が、「こおりのふしぎ」というイベントをしてくださいました。大学の先生で科学の研究をされている方です。雪ができてくるところとか、シャボン玉を凍らせるとか、子どもたちはすごく楽しい体験をさせてもらったんですけれど、その方が「科学の根本は驚く、感動するということ。今日は子どもたちがすごく驚いてくれたのはうれしかったし、これは本当に大事なことなんです」とおっしゃった。子どもたちは、体験すると考えたり、感じたり、驚いたりする。そういう経験を幼児期にいっぱい与えてあげてほしいと思います。最近は遠くへ出かけなくても、いろんな体験ができる施設がありますよね。そのときに親が一緒になってどれくらい驚くか、喜ぶか。そんなことも「アクティブ・ラーニング」に繋がるんじゃないでしょうか。
粕川:0歳でもすごく考えているんですよね。椅子を押して遊ぶと、敷物に引っかかる。動かなくなったと騒いでいたんですけれど、ある日、一人の子が持ち上げれば乗り越えられることを発見したんです。あ、自分で考えて解決したんだって思いました。でも、それをみんなが真似するわけじゃなくて、相変わらず「やって、やって」といってくる子もいるんです。そういう子は、手伝ってあげると喜んで落ち着くんですよね。本当に、その子、その子で全然違うんですよ。
宮里:今日、私たちは保育者という立場でお話をしました。親は保育者とは違っていていいんです。でも、保育者がこんな対応をすることを知っていたら、役立つこともあると思うんです。「この子はどうしてこんなことばかりするんだろう」なんてイライラしなくなって、子育てのストレスが減るかもしれない。それで、お父さん、お母さんが笑顔になると、子どもも笑顔になるでしょう。思考力や自己肯定感を育てるのって、そんな大人の対応が大切なんですよね。
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幼児教育の研究者として、数多くの保育者・教育者を育ててきた宮里先生と、若手ながら乳幼児の保育・教育に情熱を注ぐ粕川先生のお話から見えてきたのは、子どもたちの「学びに向かう力」を育てるのは、乳児期からのパパ・ママのわが子への「向き合い方」によるものが大きいということ。
わが子が大人になった時、能力を充分に発揮して、いきいきと活躍できることは、パパ、ママの願いでもあるはず。「主体的・対話的で深い学び」の力を育てるために、子どもの興味にじっくりつき合うこと、子どもの気持ちに寄り添って、思いやりの心や自信を育んであげることなど、日常生活の中でママ、パパにできる事はたくさんあります。子どもたちの幸せな未来のために、ママ、パパも自分自身の中に「学びに向かう力」を見つけたいものですね。