大人になったら、どんな仕事に就くのかな? 幸せな人生を送れるかしら? わが子の将来を考えると、パパ、ママの期待や心配はつきません。その一方で近年、急激に進むグローバル化、高度情報化によって、わたしたちの生活や仕事のあり方は変わりつつあります。それに伴い、子どもたちが受ける教育もまた、大きな変革期を迎えようとしているのをご存知でしょうか。
ポイントとなるのは「アクティブ・ラーニング」という新しい考え方を取り入れた指導方針。来年には保育園、子ども園、幼稚園などの幼児教育の現場で始まり、2020年には、小学校の授業でも取り入れられることになっています。
そこで今回は子どもがそんな新しい教育法にいちはやく馴染み、将来の学校生活を楽しんでいけるように、パパ、ママとして今から知っておきたい「アクティブ・ラーニング」について学んでみたいと思います。
「アクティブ・ラーニング」ってどんなこと?
「アクティブ・ラーニング(主体的、対話的で深い学び)」は、この春改訂された新学習指導要領で、学校教育への導入が示された教育方針です。保育所、幼稚園、認定こども園など、幼児教育を行う施設でも、2018年度から遊びの中で、アクティブ・ラーニングのための基本的な生活習慣を指導していくことが提唱されています。
まずは文部科学省初等中等教育局幼児教育課(取材時)の沓澤進さんに、その概要と幼児教育へ導入される理由、教育内容の変化について伺いました。
————まず、アクティブ・ラーニングとはどのような教育方針なのか、教えていただけますでしょうか?
これまでの学校教育では、「何を学ぶか」という知識・技能の中身や量が重要視されてきました。これに対して、アクティブ・ラーニングは、「どのように学ぶか」といった一人ひとりの学び方に注目して、「主体的、対話的で深い学び」について指導し、生涯にわたって学ぶ力を身につけるよう指導していこうというものです。
子どもたちが、学ぶことの楽しさを知り、興味のあることを自分なりのやり方で深く学び、そこで感じる疑問を自分で解決できるようになることが、この教育の目標です。これまでは「知識」や「技能」を教えてきた学校で、「学ぶ姿勢」も指導していくのは、かつてないほどの大きな教育改革と言えるでしょう。
————なるほど。では、なぜ今、そういう新たな方針を打ち出すことになったのでしょうか?
グローバル化、IT化が進み、AI(人工知能)が目覚ましく進化する現代社会では、知識・技能がすぐに時代遅れになってしまうという現実があります。ですから知識・技能を知っているだけでは、仕事や生活に役立てることが難しいのです。
また、これまでの教育の問題点として、日本の子どもたちは、自分の考えを、論拠を示しながら述べることが苦手だという指摘があります。他の国の子どもたちと比べると、学ぶことの楽しさや意義を実感しにくく、自分が社会の一員として、より良い社会を作っていこうという意識が低いという調査結果もあります。
文部科学省では、このような問題を解決するために、子どもたちが、学ぶことと自分の人生や社会とのつながりを実感しながら、身につけた知識・技能を生活や社会の中での課題解決に生かしていく力を身につけること、生涯にわたって学び続ける姿勢を持つことを指導していく必要があると考えています。
————アクティブ・ラーニングの導入によって、幼児教育はどのように変わっていくのでしょうか。
幼児教育ではこれまでも、アクティブ・ラーニングが目指しているような指導が行われていました。でも、小学校に上がると、知識・技能を学ぶことの方が重視され、「思考力」、「判断力」、「表現力」などや「学んだことをどう生かすか」という資質・能力については、あまり意識されてこなかったといえます。それが、これからは「何を理解しているか、何ができるか」、「理解していること・できることをどう使うか」、「どのように社会・世界と関り、よりよい人生を送るか」という3つの視点で、幼児期から大学まで一貫した「学び方」の指導が行われます。
その中でも幼児期の教育は、小学校以降の子どもたちの生活や学習の基礎と位置付けられ、その注目度はいっそう増しています。これまでとは大きく変わるというより、これまで行われてきた一つひとつの指導が、はっきりとした目的意識のもと、よりていねいに行われることになります。保育園、こども園、幼稚園では、今まで以上に、体験を通じて、感じたり、考えたりすることを大切にして、学ぶ楽しさを知り、自分から進んで学ぶ姿勢を身につけるような指導をしていくことになるでしょう。
アクティブ・ラーニングが始まるからといって、幼児教育がガラっと変わるということはないようです。特別なことをする必要はないけれど、小さい頃から、いろいろな体験をしたり、自分なりに考えたりする習慣を身につけることが役に立つのかもしれませんね。