冒頭にも述べましたが、今年7月24日は「働く、を変える日」と銘打って「テレワーク・デイ」が実施されます。参加する企業の社員は、少なくとも始業から午前10時30分まで出社せずに、自宅やサテライトオフィスなどで業務を始めることになります。
それにしもてなぜ7月24日が“テレワークの日”なのでしょうか。
実は7月24日は、3年後の2020年に東京オリンピック開会式が行われる日。大会期間中は、世界中から観光客が大勢訪れ、首都圏は交通混雑が予想されています。大会期間中の交通混雑などにより、業務に支障が起きないように、今のうちに会社をあげてテレワークに取り組んで、課題や問題点を発見・解決して大会を迎えようというものです。
前出・橋本さんはこう言います。
「2012年のロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会の際にも、通勤混雑回避に協力するべく、ロンドン市内の企業の8割がテレワークを導入しています。それまでもロンドン(イギリス)では子育てや介護のためにテレワークを利用している人はいましたが、大会期間中にロンドン市民で取り組んでみたら、BCP(非常事態に業務を継続するための備え)や生産性、ライフワークバランスなどの向上に繋がったという企業も多く、それを契機に産業界に認知され導入が進みました。つまり『やってみたら、その良さに、便利さに気づいた』ということですね。だから日本でもなにかのきっかけでやってみたら、『あ、これいいね』ということで浸透し、レガシーとして残っていくのではないかと期待しています」
ここまで読むと、“テレワークは都市部の新しい働き方”だと思われる方がいるかもしれませんが、そういうことでもありません。たとえば総務省では、「ふるさとテレワーク推進事業」を行い、地方にサテライトオフィス、またはテレワークセンターの拠点を作る企業を支援しています。
「テレワークは地方創生や地域の活性化にも活用されていくと考えています。東京や大阪など都市部から地方都市に移住して働く傾向は今後益々広がっていくと見られていますが、その時に大事になってくるのはテレワークがどれだけ浸透しているかということ。『社内』や『中央』だけにいなければ仕事ができないわけではなく、『自宅』や『地方』でも仕事ができるよう整備することで、社会に対してよりよい影響を及ぼせるのではないかと思っています」(橋本さん)
地方移住の文脈まで包含しているテレワーク。都市部で働くパパ、ママの中には、「仕事のことを考えると、今の暮らしは捨てがたいけれど、できるなら子どもが小さいうちは、田舎ののどかな場所で育てたい」と考えている人もいるでしょう。テレワークの環境が整い、地方にいても、東京のオフィスと連動した仕事が不自由なくできるようになれば、そんな夢も現実のものになるかも知れません。
社会全体がより多様な働き方を認め合い、選択できるようになれば、もっと子育てをしやすい世の中になるのではないでしょうか。在宅勤務からIターンまで、さまざまな働き方、生き方を可能にするテレワーク。パパ、ママが仕事のキャリアをあきらめることなく、多くの時間を家族と共にすごす生活が可能になり、安心して子育てをしていけるような働き方が日本でもどんどん広がっていくといいですね。
《※参考資料》
①世界のテレワーク事情
http://www.japan-telework.or.jp/abroad/pdf/telework_world.pdf
②平成27年度版 情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/