特別対談
少子化や待機児童はどうなる?
「2020年以降の日本の子育て」

2017.04.27

ミキハウス編集部

◆日本は子育てしやすい国、しにくい国?

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——現状の日本における、子育てを巡る環境については、どのように考えていらっしゃいますか?

松田:日本での子育ての良いところは、ひとつは「安全」ですよね。医療の分野も死亡率は低いですし、犯罪なども含めて安全面は素晴しい国だと思います。それから「教育」ですね。世界に誇れる教育水準だと思います。少なくとも、幼児期教育、義務教育期の学力は世界最高レベルです。大学はちょっと負けていますが。教育がそれだけ受けられるということは、子どもにもそれだけチャンスが広がっている国なのではないかと。また、家族や親族の力が強いということも、子どもを支えられる環境にあるということです。最低限この三つは、良い面として見ていいんじゃないかと思います。

——治安や医療を含めた「安心・安全」、世界屈指の「教育水準」、そして家族や親族の「絆」。この3つに関しては子育てしやすい社会だということですね。

松田:一方で、この国で子育てをするときに不安なのは、「お金」なんですね。やはりものすごい負担、プレッシャーがあります。それは具体的なデータでもありまして、欲しい子どもの数は2.32人、だけど予定は2.01人、実際産んでいるのは1.94人なんですね。この差の背景に何があるかというと、一番はお金。56%の女性はお金の問題で産めないと言っています。そこが、我が国が弱いところだと思います。

——半数以上の女性が金銭的理由で産めないですか……。1991年以降、出生率は低下傾向にありますが、2015年はやや上昇しています。その理由については、どうお考えですか?

松田:そこもお金です。自治体ベースで見たとき、出生率が上がっている自治体の共通点は、幅広く支援をしているということなんですね。つまりこれが何を意味しているかというと、さまざまな局面を幅広く支援してあげないと産めないということです。あるひとつの施策をやったからといって出生率が回復するわけではなく、幅広く地道にやっていくことで効果が出てきたんじゃないかと。もちろんそこには、経済支援が含まれます。

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吉村:岡山県の奈義町では、出生率が2005年には1.41だったのが、2014年には2.81と上がっていますが、非常に幅広い支援をしています。出生の祝い金や不妊の治療費も出すし、乳幼児児童の医療費も無料。3人目以上の子どもに関しては、保育料が無料といったようにね。これは、お金を使わないと子どもが増えないことを示しているんじゃないかと。

——子どもを産むのも育てるのもお金は必要ですから、国や自治体から経済的支援があるのはありがたいことです。

吉村:ただ、現在国の子育て予算は、GDPのわずか1.3%、金額にして6兆円です。これって高齢者向けの予算に比べたら非常に少ないわけです。

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——水色が高齢者向け、黄色が家族関連ですか。金額ベース見ても、その差は歴然ですね。

吉村:そして子育て予算6兆円の大半は児童手当に消えているわけです。つまり現金給付につかっている。だからその児童手当を、幼児教育の無償化や高等教育の費用負担軽減など現物給付にまわしたらどうかというのが、僕の考えなんですけどね。

松田:僕の意見は少しだけ違っています。日本の場合、子育て支援に関しては「現物」も「現金」も足りていません。ですので、現物だけ増やして現金を増やさないというのでは、たぶん出生率回復には結びつかないだろうというのが僕の見立てです。

吉村:なるほど。もう少し詳しくお聞かせください。

松田:現金給付は、安心を生みます。だからベースとしてはやるべきです。少子化を克服した他の国の場合、それをやった上で、手厚く現物給付をしているんですね。しかし日本は、とくに教育面を中心として費用負担の大部分を家族(主に親)がしますね。そこにやはり問題があると思います。つまり出生率を回復させるためには、現金も現物も手厚くできるように、子育て支援の総額を増やすしかないと思うんですね。

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——となるとやはり財源の問題にぶち当たります。

松田:そうです。そこでどこからその財源をとるかということですけど、どこにもお金がない(苦笑)。やはり増税をある程度していくことも視野に入れないといけないと思います。

吉村:僕も同意見です。消費税を含めてね、バランスを見ながらどこかで増税を決断していく必要があるでしょう。もちろん増税なんて、誰もが嫌がることです。ただね、このまま少子化を野放しにすることは、国家存続の危機につながる。それを一人一人が認識をし、この国の最大の課題であるという認識をずっと持ち続けないと。数年では何も変わらないんですよ。20年後、30年後にどうなるかということを考えていかないといけない。

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