特集「発達心理学からみる赤ちゃんの食事」(前編)
親子のコミュニケーションを育むおっぱい、離乳食の与え方

2018.09.13

ミキハウス編集部

赤ちゃんに与えるおっぱい、ミルクや離乳食は成長にとても大切なもの。しっかり栄養をとって大きく育ってもらいたいものですね。しかし、“食事”は栄養を与えるだけのものとは限りません。

ママ・パパだってひとりで食べるより、誰かと一緒に食事する時の方が楽しいでしょうし、味も不思議と美味しく感じたりもします。人間にとって食事とは栄養を摂取するためだけではなく、他の意味を持つものではないでしょうか。そうしたことを考えると、赤ちゃんにとってのおっぱい、ミルク、そして離乳食は体だけでなく心の成長にも影響を与えるのかも……。そこで今回は早稲田大学で発達心理学について研究している外山紀子先生にお話を伺いました。

 

授乳はママ・パパとふれあう大切な時間です

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赤ちゃんにおっぱいやミルクをあげている時に、ついよそ見をしていたら、赤ちゃんがじっと顔を見上げていたという経験はありませんか?

生涯にわたって発達・変化していく人間の心理を研究する発達心理学の視点から、早稲田大学の外山紀子先生は、赤ちゃんにとっての“食事”は「単に成長や生命維持のためだけではなく、生まれた時から他者とかかわるためのもの」だと指摘します。

「哺乳の時、ヒト(人間)の赤ちゃんは一気に飲むのではなく,休み休み飲みます。赤ちゃんが飲むのをやめると、それに気がついたママ・パパは『どうしたの?』と顔をのぞきこんだり、ちょっと揺らしたり,頬を触ってみたりします。そうやってママやパパが反応してくれると、赤ちゃんは飲むことを再開します。交互に相手に働きかけることをターン・テイキングといいますが、哺乳をめぐるやりとりはコミュニケーションそのものです。赤ちゃんとママ・パパとの会話の原型ともいえるでしょう。ヒトに特徴的な休み休みの哺乳は、赤ちゃんとママ・パパとのコミュニケーションのきっかけとなっているのです」(外山先生)

赤ちゃんのこうした行動はヒトに近いといわれるチンパンジーでは見られないそう。

「チンパンジーの赤ちゃんは哺乳の時に休んだりはしません。休み休み飲むと哺乳に時間がかかるので、外敵に見つかる危険性が高くなります。だから、チンパンジースタイルの哺乳の方が安全といえます。しかしヒトの赤ちゃんはそこを犠牲にしても、哺乳をきっかけにしてママ・パパとやりとりをするのです。不思議ですね」(外山先生)

それを考えると、授乳時にテレビやスマホに夢中になっていては、赤ちゃんがコミュニケーションを求めていても気がつかないかもしれませんね。もちろん授乳時にしか休める時間がないんだから、スマホくらい見せて! というママの気持ちもあるでしょう。ただ、おっぱいやミルクの時間は赤ちゃんにとっては、「栄養摂取」以上の意味があるものなので、できる限り赤ちゃんを見つめて、笑顔をたくさん返してあげたいですね。

次のページ 離乳食は赤ちゃんとママ・パパの“共同作業”です

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