0歳児は何でも口に入れてしまう時期。基本的にその時期は選り好みをしないものですが、もし食べない物があるなら、舌ざわりが嫌なのかもしれないし、なにか食べにくいと感じてるのかもしれません(口腔機能が未発達な赤ちゃんにとって、食べにくいものもあります)。
また、薄味の離乳食に物足りなさを感じていることも考えられます。
「ママ・パパが作ったものより市販のベビーフードが好きなようなら、それをあげてもいいと思います。食産業は一昔前と比べて目覚ましく発達しているし、働くママが増えて、みんな忙しくなっている現在、便利なものを使うことに罪悪感を持つ必要はありませんよ。それよりも『口に入れるものはオーガニックでなければ』とか、『栄養価の高いものを』とこだわりすぎてしまう方が心配。そもそも離乳食期の赤ちゃんは、まだおっぱい、ミルクで栄養をとっているため、赤ちゃんの食べる量について、さほど気にする必要はありません。数日単位でみてある程度量を食べていて,バランスがよければそれでよしと気長に考えた方がよいと思います。一生懸命がんばりすぎると、親は“食べて欲しい”と期待してしまいがち。それが赤ちゃんにとっても親自身にとっても重荷にならないようにしてほしいですね」(外山先生)
離乳食はママ・パパにとっても、赤ちゃんにとっても初めてのことばかり。どうしたらうまくいくのかと気をもむより、離乳期はあくまでも通過点と考えて、無理をしないことが大切なようですね。
続く後編では、イヤイヤ期も始まって、偏食やムラ食いでママ・パパを悩ませる「幼児食の与え方」について外山先生に教えていただきます。
〈参考文献〉
※1 幼児の食行動に対する母親の共感的開口に関する実験的研究 (根ケ山光一, 1999年)
※2 Feeding as a communication between mother and infant in Japan and Scotland (母子間のコミュニケーションとしての食行動:日本とスコットランドの比較)(根ケ山光一, 2000年)
【プロフィール】
外山紀子(とやま・のりこ)
早稲田大学人間科学学術院教授。博士(学術)。津田塾大学学芸学部国際関係学科教授を経て、現職。研究分野は認知発達。「食事場面における幼児と母親の相互干渉」、「離乳食期における摂食スキルの発達」、「幼児期における選択的信頼の発達」など数多くの論文を発表。著書に「心と体の相互性に関する理解の発達(風間書房)」、「発達としての共食 社会的な食のはじまり(新曜社)」、「乳幼児は世界をどう理解しているか:実験で読みとく赤ちゃんと幼児の心(新曜社)」、「やさしい発達と学習(有斐閣)」、「若者たちの食卓・自己、家族、格差そして社会(ナカニシヤ出版)」などがある。