子育て中のママやパパにとっては、粉ミルクの存在は大きなもの。母乳の出がよくないママにとってはなくてはならないものですし、働くママにとっても“必需品”という方もいるでしょう。そんな粉ミルクですが、それがどんな原材料でつくられているか、どういう方法で製造されているかについて詳しくご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は粉ミルクの成分や製造方法、開発に関するこだわりについて、雪印ビーンスターク株式会社の商品開発部の上野宏さんと育児品事業部の木村恒介さんに伺いました。
牛乳の他、様々な原材料から粉ミルクはつくられています
--まずは粉ミルクの原料について教えていただきたいと思います。粉ミルクは何からつくられるのでしょうか。
上野さん:原料は基本的には牛乳、乳製品です。ただ、人間の赤ちゃんのための母乳と子牛を育てるための牛乳は、同じ名前の成分でも分子構造まで全く同じというわけではありません。とはいえ、多くのたんぱく質や乳糖などは“ほぼ同じ成分”。そのため、そうした成分は牛乳から分離させたものを使います。またビタミンやミネラルなど、牛乳と母乳で含量が異なる成分もたくさんあります。そうしたものは、多くが食品由来の原料から成分を抽出し補うことで、母乳に近いものに仕上げています。粉ミルクの原材料表示や成分表示をお読みなると、見慣れない文字が並んでいるので不安に感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、国が定めた厳しい規格基準をクリアした原材料しか使われていませんので、そこは安心していただいてよいかと思います。
--そもそも母乳というものが、ものすごく多くの成分を含んでいるため、それを似たようなものをつくるには、いろいろな食品から成分を抽出する必要がある……結果、成分表示も複雑なものになっているということですね。ちなみに、主な原料は牛乳ということですが、牛乳アレルギーの心配はありませんか?
木村さん:牛乳アレルギーを発症する赤ちゃんはごくまれにいます。そういう赤ちゃんのためにはアレルギー用の粉ミルクもあります。ただ体が慣れることでアレルギー反応を起こさなくなると言われていますから、普通の粉ミルクを飲んで具合が悪くならないなら、心配しなくても大丈夫でしょう。
--そこはお医者さんと相談しながら、ベストな選択をしたほうがよさそうですね。さて、かなり多くの原料から生まれる粉ミルクですが、どのようにしてつくられるのでしょうか?
上野さん:様々な原料を使いますので、それぞれに成分の抽出方法は違います。そのなかで徹底しているのは衛生管理、たとえば微生物の管理です。製造工程でも殺菌処理はもちろんのこと、原料段階でも細心の注意が払われています。たとえば原料に混入してはいけない微生物がたくさん混ざっていると、意図せず残ってしまうリスクが大きくなります。なので、鮮度のいい“清潔な原料”を集める必要があります。そして、製造工程でも衛生的に溶かして殺菌して粉にし、缶に詰めていきます。時間や温度に気をつけてつくることで、栄養を損なわずに品質を保つことも可能になります。
--なるほど。どんな食品であっても、製造現場では衛生面でも安全面でも管理が徹底されるものだとは思いますが、粉ミルクは赤ちゃんに飲ませるものですから、より一層の注意が払われているということですね。
上野さん:そう自負しております。やはり、粉ミルクの製造で一番気を遣うのは微生物の管理。赤ちゃんのためのものですから、安全で高品質でなくてはなりません。スキムミルクとかプロテインパウダーなど他の乳製品と比べても、より一層厳しい乳児向けの規格基準をクリアした原料を使うのはもちろんですし、衛生的な環境を確保するのも大切なこと。そもそも、粉ミルクは国が決めた栄養や安全性についての一定の範囲の中に納まるように作られなくてはいけません。