子どものアレルギー疾患はアトピー性皮膚炎から始まり、離乳食で食物アレルギーを発症し、幼児期には喘息やアレルギー性鼻炎になってしまうという具合に変化していくというデータがあります。これが“アレルギーマーチ”と呼ばれるものです。山本先生も「アトピー性皮膚炎を発症した子は他のアレルギー疾患も出てくるケースが多い」と感じているそう。
「すでに当センターのスタッフが論文を発表していますが、生後1~4か月でアトピー性皮膚炎を発症している赤ちゃんは、食物アレルギーになるリスクが非常に高いことが分かっています。食物アレルギーを予防するためには、乳児期早期に湿疹やアトピー性皮膚炎が見つかったらすぐに治療してあげることが重要です」(山本先生)
湿疹がでたらしっかり治療して健康的な肌を保ち、最新のガイドライン(※4)を参考に赤ちゃんが食べ物を食べられる時期になったら、できるだけ早く口から食べさせてあげる。それが食物アレルギーを防ぎ、喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギーマーチへの対策にもなるということです。
厚生労働省は今年3月に改定した「授乳・離乳の支援ガイド」(※4)の中で同センターの研究結果(※5)を取り入れ、これまで7~8か月頃としていた卵黄を離乳食に取り入れる時期を5~6か月頃と改めました(卵アレルギー対策は、卵を避けるのではなく卵を少しずつ食べることが重要ということです)。
こちらの記事でも取り上げたように、私たちの身の回りには無数のアレルゲンが存在しています。それらすべてを取り去ることはできませんが、肌のバリア機能を正常に整えて、外からのアレルゲンの侵入を防ぎ、アレルギー反応の原因となるIgE抗体を作らないようにすれば、食物アレルギーも予防できるはず――そう考えた国立成育医療研究センターは2017年から「乳児アトピー性皮膚炎への早期介入による食物アレルギー発症予防研究」(PACI Study・パッチスタディ)を始めました。
「保湿で肌のバリア機能が回復すればアトピー性皮膚炎の発症を予防できることは2014年に発表した研究結果で証明できておりますが、食物アレルギーの発症予防効果示すことができませんでした。食物アレルギーに一番なりやすいのは、乳児期早期の湿疹やアトピー性皮膚炎のあるお子さんです。そのため、今回のパッチスタディの目標は、乳児期早期に発症するお子さんに対して、湿疹・アトピー性皮膚炎を早期に治療を開始して積極的に治療することができれば、食物アレルギーが予防できるという科学的根拠を示すことです」(山本先生)
パッチスタディは全国各地の17の医療施設の協力を得て、650人の赤ちゃんを対象に行われていて、現在参加者を募集中です。1ヶ月健診で湿疹を指摘された赤ちゃんは参加を検討してみるといいかも知れませんね。応募はPACI Study(http://paci-study.jp/)のHPからできます。