赤ちゃんの肌は大人に比べて、薄くてとてもデリケートなので湿疹やかぶれなどのトラブルが起きやすいとされています。荒れた肌からアレルギー性疾患の原因となるアレルゲンが体内に侵入すると、場合によってはアトピー性皮膚炎を起こしたり、食物アレルギーや花粉症などのアレルギー性疾患につながることも。
国立成育医療研究センターが行った研究では、新生児からのスキンケアがアトピー性皮膚炎の発症率を低下させることが報告されています。最近は日本人の2人にひとりが悩まされているというアレルギー性疾患を予防できるのなら、わが子の将来のために正しいスキンケアを心がけたいですね。そこで、国立成育医療研究センターの皮膚科診療部長・吉田和恵先生に赤ちゃんのスキンケアについて教えていただきました。
「適切なスキンケア」でアトピーの発症率が3割減というデータも
I:最近は新生児期からのスキンケアが奨励されていますね。これはいつ頃から、どのように始めるのがよいのでしょうか?
吉田先生:産院にいる間はケアしてもらえるでしょうから心配はいりませんが、おうちに連れて帰ったらすぐにスキンケアを心がけていただきたいです。スキンケアといっても難しいことをする必要はなく①「肌を清潔」にして、②「保湿剤などで保護」すること。この2点をやってもらえればOKです。
I:赤ちゃんの肌ってきめ細かくて、もちもちしているので「放っておいてもいいんじゃないか」と考えてしまいがちですが全くそうではないと。
吉田先生:もちろん肌の質には個人差がありますから、特別なケアをしなくても健康な肌を保てる赤ちゃんもいるだろうとは思います。でも生まれたばかりの赤ちゃんの肌は大人の半分ぐらいの薄さで、肌を守るバリア機能の角質も薄いので刺激に弱い。反面、皮脂の分泌が多く、汗をかきやすいんですね。またオムツをしている部分は汚れたりムレたりすることもあります。
吉田先生:肌着との摩擦で肌が傷むこともあります。さまざまな要因で湿疹やかぶれが起きやすい状況なわけですね。適切なケアをしていればこうならずに済むことは多いですし、健康な肌を保つことができれば、アトピー性皮膚炎にもなりにくいとも言われています。
I:新生児のスキンケアがアトピー性皮膚炎の発症予防にもつながるわけですね。
吉田先生:吉田先生:当センターで行った研究では、家族にアトピー性皮膚炎の患者さんがいるハイリスクの赤ちゃんに新生児のうちからスキンケアを行ったところ、アトピー性皮膚炎の発症率が約3割低下したというデータがあります。
しかしながら国際的には、新生児からのスキンケアがアトピー性皮膚炎の発症予防に効果があるかに否かについては意見が分かれています。また、アトピー性皮膚炎の発生要因は多岐にわたるので、十分なスキンケアをしたからといって100%防げるわけではありません。
とはいえ、肌のバリアがしっかり機能していれば、花粉症やさまざまな食物アレルギーを予防することもわかっています。スキンケアをしているからあらゆるアレルギーを「完全」に防げるわけではありませんが、赤ちゃんの頃からスキンケアをした方が良いとは思います。