――産後うつになる原因としてはどんなものがあるのでしょうか。
立花先生:社会的背景、生活環境、人間関係などいろいろな要因がベースにあって、産後のホルモンバランスの乱れや大きなからだの変化が引き金となって発症すると考えられています。
――まだわかっていないこともたくさんあるんですね。
立花先生:そうですね。核家族が当たり前となり、出産年齢も上がっています。家族のあり方も変化していて、昔はおばあちゃんに手伝ってもらえるのが当たり前だったけれど、最近は産院から帰ったとたんに家でママと赤ちゃんがふたりきりですごす家庭は珍しくありません。パパが仕事で忙しく、家事や育児の負担がママだけにかかってしまったりすると、ママのメンタルヘルス不調の原因になります。妊娠・出産で仕事を辞めたことがストレスになっている場合もありますし、妊娠中から家庭内で家族の絆をあまり感じられていないと産後うつになりやすいということも分かっています。多くの場合、複数の要因が重なっておきるものです。
――他にも産後うつになりやすい要因はありますか?
立花先生:以前うつになったことのある人はかなりハイリスクですね。ただ知っておいていただきたいのは、産後うつは特別な人がかかる病気ではなくて、健康で精神力に自信がある人でも発症するかもしれないということです。
――誰でも発症する可能性があるということですか?
立花先生:そうです。医師としてはそこをママやパパ、周りの人にもっと広く知っていただきたいと考えています。いつも元気で特に問題がないようでも、授乳の時間が気になったり、赤ちゃんの世話をしなればと気が張っていて、疲れているのに全く眠れなくなるママもいるんです。睡眠不足になると、からだがつらいだけではなくて、こころの調子も崩してしまうことがありますから、気をつけていただきたいです。同じママが1人目の時は大丈夫でも、2人目、3人目で経験するかも知れないし、反対のケースもあります。いつ誰がかかるか分からないということも知っておいていただきたいです。