世界の子育て Vol.2 ドイツ編(後編)
医療費&教育費が無料 
経済的不安が少ないドイツの子育て

2019.03.28

ミキハウス編集部

この春、日本では今年10月から幼児教育・保育の無償化を実施するための「子ども・子育て支援法改正案」を審議しています。この新しい制度は、子育て家庭の経済的な負担を減らし、少子化に歯止めをかけるものとして期待されています。

先進諸国の多くが悩む少子化問題。こうした少子化への行政の取り組みが成果をあげ、出生率を上げているのがドイツです。

不定期連載「世界の子育て」vol.2は、ミュンヘン在住の日本人ママ・溝口シュテルツ真帆さんのお話を紹介しています。妊娠・出産や産後ケアなどについて紹介した前編に続き、後編ではドイツの充実した子育て支援や育児休暇、保育園事情について話していただきました。

 

各種支援金で経済的な不安が軽減され、子育てに前向きになれる

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――妊娠・出産、子育てへの支援策が功を奏して、ドイツは最近出生率が上がっているそうですね。

溝口さん:そうなんです。ドイツ連邦統計局の発表では、2016年の出生率は1.59で1973年以来最高になったそうです。私が病院の説明会に行った時も妊婦さんが何百人も来ていました。もちろん(多産傾向のある)移民や難民を大量に受け入れたこともありますが、景気が好転し、子育て支援策も充実してきて、経済的な理由で子どもをあきらめなくていいことも大きな要因だろうと思います。

――具体的にはどんな支援が受けられるんですか?

溝口さん:医療費だけでなく、教育費も基本的には大学まで無料です。その上、子どもが18歳になるまで国から毎月192ユーロ(約2万4千円)が支給されます。親は生活のためのお金さえあれば、安心して子どもを大学まで行かせることができるんです

――それは手厚いですね。

溝口さん:そうした支援は国からだけではありません。わたしが住んでいるミュンヘンはバイエルン州にあるのですが、ここは自動車産業が盛んで自治体の財政が豊か。そんな背景もあってかバイエルン州は昨年から1~3歳までの子どものいる家庭に月に250ユーロ(約3万2千円)を支給するファミーリエンゲルト(家族金)を始めました。保育園にはお金がかかるのでその分を自治体が負担するという形ですね。

――国も自治体も子育て支援に力を入れているんですね。企業のサポート体制はどうですか?

溝口さん:妊娠・出産に関しては、まず母体保護のための14週間の産前産後休暇があります。その後エルターンツァイト(親時間)と呼ばれる育児休暇を取れるのですが、これは母親と父親を合わせて18か月です。そのうち1年間は上限を1800ユーロ(約23万円)として給料の70%が国から支払われる仕組みです。

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――合わせて18か月というのはどういうふうに取るのですか?

溝口さん:例えば、産後休暇がすぎたらママが半年間赤ちゃんの面倒を見て、そのあとパパが半年休んで家事、育児をするという感じでしょうか。子どもが8歳になるまで育児休暇は分けて取得できるので、半年分は残しておいて小学校に入る前に残り枠を使って長い家族旅行に行くなんてこともできるんです。うちの夫は3度に分けて育児休暇を取って、そのうち1度は一緒に日本に長期で帰りました。産前産後休暇と「親時間」を合わせると両親で合わせて21か月以上も休めるということになっています。

――そんなに休めるなんて、羨ましい限りです……。日本でもそこまで長い期間ではありませんが、制度としては育児休暇も存在するし、多くの企業が採用しています。ただこういう制度を十分に使えるか否かは、「正規」か「非正規」など雇用形態で違ってきたりします。ドイツではそのあたりどうですか?

溝口さん:ちゃんと住民登録をして税金を払ってさえいれば、私のような外国人のフリーランスでも育児休暇中の収入の補助も受けられます。国がお金を出しているんですよね。

――社会保障制度の充実ぶりはすごいですね。

溝口さん:税金と社会保障費は高いんですけれど、それがこういうことにも使われていると実感できるので納得感はあります。特に妊娠・出産、育児を経験するとすごく助けてもらっているのが分かりますね。

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