――もし同居の家族に感染の疑いのある人や感染者がいる場合は、プレママへの感染を防ぐためにできることはありますか?
吉村先生:インフルエンザなど他の感染症の場合と同じで、生活する部屋は別々にする、タオルや食器を共有しない、家庭内でもマスクを付けるなどして、ご自身を守っていただかなければなりません。軽症者でもホテルで療養することができるなら、それを利用してもらうといいでしょう。妊婦さんが感染者の濃厚接触者となったり、その疑いがある時には、妊婦健診前に産科に電話で相談することも忘れないでいただきたいですね。
――新型コロナウイルスは本人が意識しない中で感染していたり、感染させていたり…いわゆる“無症状感染”がとても怖いですよね。
吉村先生:だから予防するしかないんです。感染症予防に手洗いが有効性であることは国際的に認められていましたが、マスクについては効果が疑問視されていたんですよ。ところが、WHOは6月5日にそれまでの指針を転換して、公共の場でのマスクの着用を推奨すると発表しました。感染している人が唾液をまき散らすのを防ぐマスクには、他の人にうつさないという効果もあるはずです。うがいもあまり意味がないとは言われているけれども、やらないよりやったほうがいいです。マスクやうがいという、日本人が小さい頃から家庭や学校で教えられたことっていうのは、生活習慣として正しいということが今回証明されたと私は考えています。非科学的だという人もいるかも知れないけれど、感染者や死亡者が日本で少ないことは事実ですし、それには日本人の習慣が非常に大きなファクターになっていると考えることができますよ。
――日本を含めてアジアでの感染者数、死者数が少ないのはさまざまな要因があるのでしょうね。もし、妊婦さんが「私もコロナかもしれない」と思ったらどうしたらよいでしょうか?
吉村先生:万が一風邪の症状や37.5度以上の熱が2日以上続く場合は帰国者・接触者相談センターに電話した上で、かかりつけのお医者さまにも電話で相談しましょう。強いだるさや息苦しさがある場合も要注意です。
お住いの地域の帰国者・接触者相談センターは厚生労働省のHPから探すといいでしょう。
――症状は軽いけれど、妊婦健診に行かずに少し様子を見たいという場合はどうしたらいいですか?
吉村先生:感染が心配で妊婦健診を延期する場合は、自宅で血圧を測って、記録を取っておくといいでしょう。不正出血、お腹の痛み、血圧の上昇などがある場合は、かかりつけの産科の医師に電話で相談してください。
――プレママはちょっとしたからだの異変でも遠慮せずにかかりつけのお医者さまに相談した方がよさそうですね。
吉村先生:そうですね。気軽に電話していただきたいです。風邪のような症状でも、市販のお薬で治そうとせずに、まずは医師や薬剤師に相談していただきたいです。抗菌薬(抗生物質)を自己判断で服用すると、万が一新型コロナウイルスに感染した時に、細菌性肺炎の治療が難しくなることも考えられます。
――ところで、妊娠中のレントゲンやCT撮影は可能なんでしょうか。
吉村先生:胸のレントゲンは全く問題ないです。CTにしても胸だけなら、大丈夫です。妊娠に気づかずに胸のCTを撮っても線量的には全く問題はありませんから安心してください。