いよいよ夏本番、暑さで疲れがちなプレママにとって、ちょっぴりつらい季節です。それに加えて今年は、新型コロナウイルス感染症も気になります。おなかの赤ちゃんとともに健やかな日々をすごしたいと願うプレママのために、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に、感染症や熱中症の予防など、この夏妊婦さんが気をつけたいことについて詳しく教えていただきましょう。
マスクを“正しく”外して、熱中症を防ぎましょう
――厚生労働省が5月に発表した新型コロナウイルスの感染予防のための「新しい生活様式」(※1)は、三密の回避やマスクの着用、手洗いを基本とする生活様式を国民一人ひとりが励行するように呼びかけています。今年の夏は、暑さ対策だけでなく、感染症予防も考えなくてはならないんですね。
吉村先生:そうです。この季節、外出時のマスク着用は暑苦しいなと思うけれど、避けられないことになってしまいました。妊娠していない人でもマスクをしていると、熱がこもりやすくて体温の調整がうまくいかなかったり、喉の乾きを感じにくくなって水分補給を忘れがちで熱中症になりやすいんです。今年の夏は、感染症予防のためにマスクを付けている時間が長くなってしまいがちですが、特に妊婦さんは代謝量が多くて体温が高くなっているために、熱中症のリスクが高いということを知っておいていただきたいと思います。
――感染症予防に欠かせないマスクとはいえ、プレママの熱中症の原因になってしまうと困りますね。
吉村先生:そうです。ですから、妊婦さんはできるだけマスクを外すように心がけていただきたいと思います。公園を散歩する時やまばらに人が歩いている歩道のような場所ではマスクは必要ありませんから、電車の中や駅など人混み(=三密、もしくはそれに準ずる状況)ではマスクを付けても、外に出たら外すという事をこまめに繰り返してもらいたいです。
――なるほど。でもマスクの付け外しが返ってリスクになる、なんてことも聞きます。つまり一度使用したマスクの表面にはウイルスが付着している可能性がないわけではないと。外したマスクの“行き場”がわからないから、暑くても、人がいなくても付け続けているケースもあるのではないでしょうか。
吉村先生:そうですね。ですから、僕はクリアファイルをマスクの大きさに切ってホルダーを作り、外したらすぐにそれに挟んでおくようにしています。自作でも売っているものでも、どんなものでもいいのですが、“マスク入れ”は持っていた方がいいです。あとはマスク用の抗菌・抗ウイルス効果のあるスプレーも使いたいですね。私はいずれも常に携帯しています。
――先生は布マスク派ですか?
吉村先生:いや、使い捨てのマスクです。それでも一回で使い捨てなんかしませんよ。一日中ずっとつけているわけではないし、つけていない時もキレイに保管しているし、そして使い終わったら抗菌・抗ウイルススプレーも噴霧しているから、1枚を数日使い続けています。マスクホルダーと抗菌・抗ウイルススプレーを上手に使い衛生管理をすれば、マスクを付けたり外したりするのも難しくありません。
――先生が意外と庶民派なことに驚きました…。いずれにせよ、夏場は上手にマスクを付けたり外したりすべし、ということですね。
吉村先生:はい。マスクを外せる場所を選んで歩くとか、人と接することの少ない歩き方を考えるとか、今年の夏は三密を防ぐ工夫はどうしても必要になります。密閉した空間にならないように窓を開けることも推奨されていますから、適宜換気をしながら部屋を適温に保つよう工夫をしてもらいたいと思います。そういう意味では、エアコンの設定温度を例年より下げた方がいいかも知れませんね。他に熱中症予防の観点から水分摂取も大切ですね。厚生労働省の「熱中症予防 × コロナ感染症防止で『新しい生活様式』を健康に!」のリーフレット(※2)にもありますが、妊婦さんには特に、のどが渇いたと思う前にこまめに水分を補給することも心がけてもらいたいです。