【専門医監修】子宮頸がんとHPVワクチン、日本人が知っておきたい話(後編)

ワクチン接種で1次予防、定期検診で2次予防を

ワクチン接種で1次予防、定期検診で2次予防を

――ところで、子宮頸がんには定期検診も行われていますね。自治体から通知を貰うことがあります。

吉村先生:そう。子宮頸がんは早期に見つけることができれば、治療は難しくありませんから、検診も受けていただくといいでしょう。日本では健康増進法によって、多くの自治体で20歳以上の女性を対象に2年に1回の子宮頸がん検診が実施されています。

――自治体が通知をくれるから、検診の時期を忘れることもないし、費用もほとんどからないので気軽に行けます。

吉村先生:ところが、2013年度の受診率を見ると日本は42.1%で、70~80%の欧米と比較すると非常に低い。20代に至っては20%(※10)なんですよ。WHO(世界保健機関)もこうした地域格差をなくすべく、2019年5月に「子宮頸がん排除のための行動」(※11)についての声明を出し、世界に向けてHPVワクチンの接種と定期検査を呼びかけています。

子宮頚がん検診の受診割合 国際比較

――ワクチン接種をすれば、検診は必要なくなるのではないですか?

吉村先生:いえ、そんなことはありません。HPV感染症の1次予防はワクチン接種、2次予防は検診による前がん病変の早期発見です。日本の現状では社会に集団免疫ができるのはまだ先になりそうですから、接種と検診でしっかりと自己防衛をすることが必要です。今のプレママ・ママ世代は接種していない人がほとんどですから、2年に1回の検診は必ず受けてください。もし娘さんをお持ちなら、12歳になったらぜひHPVワクチンを接種してあげてくださいね。


定期接種の対象年齢をすぎていても、全額自己負担ならワクチン接種は可能です。もちろん男性も同様です。子宮頸がんや中咽頭がんなどHPV感染症によるがんが気になるなら、ママ、パパも接種を検討してもいいかもしれません。20年後、30年後の日本をHPV感染症のない社会にしていくためにも、ワクチン接種に社会全体で取り組みたいものですね。

<参考資料>
吉村泰典(よしむら・やすのり)
慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医

1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。

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