【専門医監修】 他人事じゃないから知っておきたい
「乳がん」との向き合い方

ミキハウス編集部

進化を続ける乳がん治療

I:古いイメージなのかもしれませんが、乳がんの治療というと、手術で乳房を失ってしまうのではないかと考えてしまいます。女性としては非常につらい経験ですよね…。

才田先生:昔は乳房を大きく切除することが乳がんの根治に繋がるといわれていましたから、大胸筋という胸の下にある筋肉まで全部取るような手術が行われていました。でも最近では手術などの外科的な治療に加えて、ホルモンの作用を抑える内分泌療法や抗がん薬などの薬物療法、放射線療法など、様々な治療法を組み合わせて、一人ひとりの患者さんに合わせた治療が重要といわれています。がんはひとつとして同じものはありませんし、患者さんのからだの状態もそれぞれ違いますから。

進化を続ける乳がん治療

I:切除手術以外にも、いろいろな治療法が組み合わせて行われるのですね。

才田先生:はい。そして切除手術でも、乳房の温存も多く行われるようになりました。おおむね3㎝までの腫瘍なら、腫瘍から1〜2㎝ほど離して周囲を切除して終わるものもあり、全摘よりも小さく切除することが可能です。

I:乳房をほとんど取らなくてもいい場合もあるということですか?

才田先生:できることもある、と考えていただければと思います。がんの位置によっては小さく切除してもへこんでしまったりとか、変形が避けられないこともあって、そういう場合は乳房の全摘や、全摘後の再建を提案させていただくこともあります。乳房再建の技術も進化していて、たとえばご自身の乳頭や乳輪を残して皮下の乳腺だけを切除できれば、再建後には正面から見ると傷がわからないくらいきれいに治る方もいます。

I:そんな事ができるんですか。

才田先生:乳房の切除と同時に再建の手術までできる場合もあります。患者さんが手術後に麻酔から覚めるとちゃんと胸のふくらみがあるという。これも特別な手術ではなく、健康保険の適用範囲で行われる標準治療です。ただし、先ほども説明したように、乳がん治療は人によって違います。

I:女性にとって乳房は、目に見えるからだの一部ですから、できる限り取りたくないと思うのは当たり前ですよね。

才田先生:新しい治療法の研究も進んでいます。厚生労働省が先端医療による治療を希望する方のために定めた「患者申出療養(かんじゃ もうしで りょうよう)制度」(※3)という仕組みの中で、ラジオ波熱焼勺療法(ラジオはねつ しょうしゃく りょうほう)も始まりました。皮膚の表面からがんに電極針を刺し、針から発生させたラジオ波の熱で腫瘍を焼いてしまうというものです。この治療法はまだ長期的な効果がはっきりしてないのと、治療を行える腫瘍の位置や大きさなど条件があるために、今のところ国立がんセンター中央病院など全国5つの医療機関(※4)のみで実施されています。他にもいくつかの治療法も開発中ですから、がんの治療はもっと進化していくと考えられます。

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