赤ちゃんが欲しいのになかなか妊娠しないプレママとプレママ。不妊治療が必要かもと考えても、ふたりの体のデリケートな問題だし、どんな治療を受けることになるのかが想像できなくて、産科で相談するのを先伸ばしにしてしまうこともあるでしょう。
そこで今回の「不妊治療の基礎知識〈part2:治療の現状と課題〉」では、不妊治療の実態を紹介していきます。不妊治療では何が行われるのか、費用はどれくらいかかるのか、成功の確率などについて慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に伺いました。
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。
不妊治療の最初のステップは、女性、男性それぞれの検査です
不妊治療は普通、不妊の原因を特定する検査から始まります。原因の中に治療すべきものや治療が可能な疾患があれば、それを治療することで妊娠できるかも知れないからです。ここでは女性と男性がそれぞれに受けることになる主な検査を取り上げます。
【女性の検査】
・内診、経腟超音波検査
子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣のう腫、感染症などの有無を調べる。子宮内膜症や子宮筋腫の疑いがある場合には、追加でMRI検査や腹腔鏡検査を行う。
・子宮卵管造影検査
レントゲンで子宮内の異常や卵管の通過性を調べる。子宮口から先端にバルーンのついたカテーテルを入れ、そこに造影剤を注入して、子宮頸管、子宮腔、卵管を撮影する。
・血液検査
女性ホルモンの分泌やそれに関係する甲状腺の機能などを調べる。妊娠が成立する黄体期に十分な女性ホルモンが分泌されているかを調べるため、月経周期に合わせて2回の検査を行う。
・性交後試験
排卵直前の最も妊娠しやすい日に性交を行い、翌日、女性の子宮頸管粘液を採取して、その中に運動精子があるかを調べる。速くまっすぐに動く直進運動精子がない場合は、免疫因子(精子を不活化させる抗体)の有無などを調べる。
経腟超音波検査や子宮卵管造影検査の際、痛みや不快感を訴える女性は多いのですが、「検査によるメリットがあることを知ってもらったら、少しは気持ちが楽になるのでは」と吉村先生。
「特に子宮卵管造影検査は、卵管を塞いでいた粘液などが取り除かれる、卵管の動きを阻害していた癒着が取れる、受精卵を子宮へ運ぶ卵管内の腺毛が刺激されるなどが起きるために、検査後数か月間は妊娠率が上がるというデータもあります」(吉村先生)
【男性の検査】
・精液検査
自慰で採取した精液を検査し、精子の数や運動率などを調べる。検査は産婦人科や泌尿器科で行う。精液検査で異常が疑われた場合、精索静脈瘤などの病気がないか検査をする。
検査は、女性にとっても男性にとっても精神的な負担を感じることがありそうです。それでもここが不妊治療の第一歩。ふたりが心を一つにして、最初の難関を乗り越えていきたいですね。