【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.2 
相談「集団生活が苦手な場合にはADHDを疑うべき?」ほか

“今、日本一相談したい小児科医”と言われる、慶應義塾大学医学部教授で小児科医の高橋孝雄先生。本連載をきっかけにさまざまなメディアで活躍、2冊出版した自著の累計発行部数も10万部を超え、ますます注目を集める存在となっています。そんな高橋先生を迎えて、出産準備サイトと本屋「B&B」がコラボして、子育て相談イベント「いま、日本一相談したい小児科医高橋孝雄先生の〈子育てアレコレ相談室〉」を2020年11月25日に開催しました。参加者が口をそろえて「素晴らしい内容だった」と絶賛した同イベント。出産準備サイトで、その様子を一部レポートいたします!

高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 

専門は小児科一般と小児神経。
1982年慶應義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

集団生活が苦手なわが子…ADHDを疑うべき?

集団生活が苦手なわが子…ADHDを疑うべき?

担当編集I(以下、I):前回に引き続き、参加希望者の方から集まったリアルな子育てのお悩みについてお答えいただきたいと思います。

高橋先生:はい、よろしくお願いします。

I:では、お一人目の相談者です。

【相談1】
5歳の男の子ですが、とにかく集団生活が苦手です。
幼稚園では先生の指示どおりに動けず、他の子はみんなできるのに、うちの子だけが集団から外れて行動しています。
注意されたら、パニックに陥り、その場から逃げ去ろうとします。
先生も手を焼いており、「正直どうしたらいいかわからかない」とまで言われました。
しばらくすれば落ち着くものなのでしょうか?
それともなにかの病気(ADHD?)を疑うべきでしょうか。(くるりん)

高橋先生:5歳の男の子としては、これは本当によくある話です。同じような不安から、病院に連れて来られる子もいるのですが、(お話を聞くと)大体このパターンです。幼稚園なり保育園なりで「集団指示がとおりません」「こんなのはお宅のお子さんだけですよ」と言われたと。最近はいろいろマスコミで取り上げられていることもあり「ADHD(注意欠如多動症)かもしれません」と、そこまで言われて私のところに来る方もいらっしゃいます。ただ、こういうケースの多くはADHD ではないんですよね。

I:そうなんですか。

高橋先生:園の先生に注意を受けたからといって、慌てる必要はないと思います。ただ時には、ADHDの傾向が確かにあって、それがお子さん自身の足を引っ張っているケースもあるので、そういう場合は病院で相談していただくのがいいかと思います。

I:ADHDは発達障害の一つですね。ちなみにADHDかどうかは、どこで見極めるものなのでしょうか?

高橋先生:大事なポイントは、幼稚園や保育園だけではなくてお家でもそういう問題があるか、ということです。2箇所以上の違う場所で同じような行動パターンの問題が起こっているのであれば発達に問題があるかもしれません。もう一つのポイントは、ADHDと言ってもただ落ち着きがないだけではなくて、衝動性がある、うっかりミスが多い、などの特徴があるということです。お子さんがADHD かもしれないと言われているその根拠が、とてつもない落ち着きのなさなのか(多動性)、急に飛び出してしまうなど衝動的に行動を起こしてしまうことなのか(衝動性)、あるいは幼稚園児とはいえ、いくらなんでも忘れ物が多すぎることなのか(不注意)、具体的に考えてみてください。もし園の先生などにADHDの疑いを指摘されたら、どこが具体的に問題なのか、もう少し詳しく話を聞いてみてもいいかもしれないですね。わが子のことを一番わかっているのはお母さん、お父さんのはずです。「そう言われてみれば先生の言うこと、家にいる時にも当てはまるな」と感じたら、ADHDかもしれないと疑ってもいいかもしれませんね。

I:相談者さんの場合は、家ではちゃんとしているのに、集団生活となった途端に変な行動をしてしまう、ということのようです。程度問題だとは思いますが、この時期のちょっとやんちゃな男の子だと受け入れるべきか、それとも気にするべきなのか、どうなのでしょうか。

高橋先生:おっしゃるとおり程度の問題なので、無責任に十把一絡げで「放っておいても良い」とは言えません。ただ、5歳の男の子ですよ。自分が5歳の時のこと思い出してごらんなさい、とは思います。もう一つが、例えば20人なら20人、5歳の男の子を集めたら、それはいろんな子がいますよね。引っ込み思案でとても静かな子もいれば、何をやるにしても一番に飛び出していく子とか、声の大きな子もいる。それはどちらも正常で、個性の範囲だという理解が大事だと思います。

I:その個性の範囲という認識で、「ちょっとやんちゃで暴れん坊だという子は、そういうものである」と、腹落ちさせることが大事なのでしょうか?

高橋先生:もちろん「そのままで良い」とは言いません。しつけをする必要もありますし、言って聞かせることが必要な場面もあると思います。特に、人に迷惑をかけるような行動は慎むべきだという点は、5歳であっても、言うべき時には言うことだと思います。それは親の仕事。しかし、それと5歳の息子を、そういう人格なのだ、そういう病気なのだ、と親が決めつけてしまうのとは別問題です。問題行動があったら、個々の問題行動に対して、親が向き合って真面目に意見を述べつつも、その総体として、「うちの子はこういう子だ」というような決めつけはしない方が良いでしょう。

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