「妊娠中期」とは、妊娠14週0日〜27週6日の期間を指します。一般的には、つわりが治まり体調が安定してくる方が多い時期。胎動を感じ始める方が増え、おなかの赤ちゃんの存在をより身近に感じられることでしょう。
そこで本記事では、妊娠中期におけるおなかの赤ちゃんの「成長」の過程をまとめます。監修は慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生です。
妊娠中期の赤ちゃんの様子や大きさは?
この時期までに赤ちゃんの体の基礎はほぼ出来上がり、これから成長のスピードが加速していきます。以下、週ごとの変化をまとめます。
(※数値は目安であり個人差があります)
妊娠4か月後半
〈妊娠14週〉臓器の基本的な形が完成します
臓器の形成:おなかの赤ちゃんの臓器は基本的な形が完成し、肝臓や脾臓が赤血球を産生するなど機能面も進んでいます。髪や眉毛、爪などもこの頃から成長を始めるとされます。
体重・大きさ:個人差はありますが、一般的には40〜60g程度と考えられます。長さは頭殿長で8〜10cm前後です。
動き:四肢を動かし始めるのもこの頃で、超音波検査で手足の運動が確認できることがあります。

〈妊娠15週〉つわりが和らぐ人もいれば続く人も
胎盤の完成:胎盤は妊娠14〜16週ごろにかけて基本構造が完成し、その後も赤ちゃんの成長に合わせて大きくなります。満期時には直径15〜20cm、厚さ2〜3cm、重さ約500g程度まで成長します。
体重・大きさ:15週末には頭殿長約10cm、体重100g前後。外性器の形も整ってきて、体位によっては性別がわかる場合も。ただし、胎児の体位や向きによっては、確認が難しいこともあります。
つわり:多くのプレママは妊娠12〜16週頃に症状が軽減しますが、約15%は20週頃まで、まれに出産まで続くこともあります。つわりが長引いたり嘔吐が激しい場合は医師に相談しましょう。

妊娠5か月
〈妊娠16週〉からだがほぼ完成し、羊水を飲む様子も
赤ちゃんのからだは細かい部分までほとんど完成します。体重は約100〜120gまで成長していますが、個人差が大きくなる時期でもあります。四肢や臓器がほぼ形成され、エコー検査で赤ちゃんが羊水を飲みこむ様子を観察できるようにもなります。

〈妊娠17週〉顔立ちも人らしく、指しゃぶりをするように
体重は約150g、長さ約13cmで、顔立ちが人らしくなります。全身にうぶ毛が生え、髪の毛やまつげ、眉毛も生えてきます。また、手足の指先には将来、指紋になる渦巻き模様もできてきます。この時期から赤ちゃんは、手や指を吸う仕草をするようにもなるので、エコー検査で指しゃぶりする姿を見られるかもしれません。

〈妊娠18週〉筋肉や皮下脂肪がつき、動きも活発に
体重はおよそ150〜200gとばらつきがあります。これは、16週あたりから個人差が大きくなること、またそもそも推定胎児体重は、およそ±10%の誤差が出るためです。あくまで目安程度とお考えください。
筋肉や皮下脂肪がついて、からだを反らす、首を左右に振る、手の指を握るなどの動きをするようになります。赤ちゃんはどんどん活発になってきますよ。また耳がほぼ完成し、外からの大きな音に反応するようにもなります。

〈妊娠19週目〉胎動を感じられるママも増えてきます
このころから、赤ちゃんの動きを胎動として感じる方が多くなるようです。一般的に胎動をはじめて感じるのは妊娠5〜6か月ごろが多いですが、早い人は4か月末から、遅ければ7か月に入って感じる方もいらっしゃいます。
赤ちゃんの頭の大きさは鶏の卵ぐらいまで成長し、からだ全体のバランスとしては3頭身とまだまだ頭でっかち。皮下脂肪もからだ全体についてくるので、少しだけふっくらしてきます。

妊娠6か月
〈妊娠20週〉赤ちゃんの顔立ちがはっきりしてきます
妊娠期間40週の折り返し地点に到達です。赤ちゃんの体重は250~310g。感覚に関わる脳の中枢神経系が発達。顔立ちがはっきりしてきます。この時期までに胎児の運動パターンはほぼ出揃い、また足の骨がしっかりして筋肉もついてくるので、胎動を激しく感じることも。

〈妊娠21週〉脳の神経回路が複雑になり始めます
それまで比較的なめらかだった赤ちゃんの脳では、神経回路が複雑になり始め、多くのニューロンがつながることで発達が加速します。消化器や泌尿器などの内臓も成熟し、骨や筋肉がしっかりしてきて動きが大きくなります。エコー写真でも、ますます赤ちゃんらしい姿が見られるようになりますよ。

〈妊娠22週〉ホルモン分泌がはじまります
体長約19cm、体重は約450〜460g。内臓や器官がほぼ完成し、性腺(精巣・卵巣)もさらに発達します。男の子の場合は男性ホルモンが分泌されて外性器の発達を促します。遺伝上の性は受精と同時に決まり、外性器の分化は妊娠14週ごろまでにはほぼ完了します。
胎児期の男性ホルモンは神経回路の形成にも関わるとされていますが、性自認や将来の行動には遺伝や環境など多くの要因が影響するため、ホルモンだけで決まるわけではありません。

〈妊娠23週〉どんどん成長する赤ちゃん。でもほとんど寝ています
赤ちゃんの身長は約30cm、体重は550〜600g前後、超音波エコーの画面からはみ出すほどに成長しますが、ほとんどの時間を眠ってすごしています。ママのおなかも前にせり出してくるので、それの影響で腰痛や背中の痛みを感じることが多くなってきます。また子宮も大きくなり、横隔膜を押しあげるため心臓や肺が圧迫され、息苦しさを感じることもあります。血液量が増えて、通常時より心臓に負担がかかるため、動悸や息切れが起こりやすくなる時期です。

妊娠7か月
〈妊娠24週〉羊水を飲んでしゃっくりすることも
赤ちゃんの体重は660g前後まで成長しています。赤ちゃんの皮膚の下では毛細血管がつくられて少しずつ肌がピンク色になっていきます。このころの赤ちゃんはママのおなかの中でぐるぐる回転することもよくあります。ちょうど耳の内耳が発達し、平衡感覚が備わってくるころなので、上下前後ぐるぐると回っても、自分がどの位置にいるのかわかるようになっています。まぶたが完成し、上下にわかれて、パチパチと瞬きができるようにもなります。また羊水を飲み込んでしゃっくりすることも。

〈妊娠25週〉ママの声や体内の音を聴き始めます
この頃から、赤ちゃんの聴覚は外の音に反応し始めます。ただし、子宮の中では高い音は減衰し、母親の心拍や血流音などの低い音がよく伝わります。母親の声の低い部分は胎児の耳に届きやすいので、優しく話しかけたり本を読んであげたりするとよいでしょう。しっかり聴かせようと大きな音を浴びせたり、おなかにヘッドホンを当てるような刺激は赤ちゃんの聴覚を損なう可能性があるため避け、日常のやり取りの中で穏やかに声や音を届けることが大切です。

〈妊娠26週〉エコーで外性器がはっきり見えることも
赤ちゃんの大きさは個人差が顕著になってきますが、平均体重は900gほど、大きな赤ちゃんでは1000g近くにもなります。8週ごろから嗅覚受容体は形成されていますが、この頃から嗅覚がより発達してきます。胎内では嗅覚より味覚が主体とされ、羊水を通じて母体の食習慣に親しむと考えられています。出生後、母乳の香りや風味を好む傾向があるのはこの経験の影響といわれます。さらに、この頃になるとエコー検査で外性器が明瞭に観察できることが多く、性別を知ることができます。

〈妊娠27週〉光と影を認識するようになります
赤ちゃんのまぶたは27週頃に開き始め、外界の明暗を感じ取るようになります。赤ちゃんは子宮とおなかの壁ごしから差し込む光を「明るい」と感じるようで、その光に反応して身じろぎする様子が見られることもあります。
光を感じられるようになることで、昼と夜の区別、1日24時間のリズムを認知し、規則的な睡眠と覚醒のリズムを持ち始めると言われています。胎児期の睡眠は脳の発達に重要な役割を果たすと考えられています。
日常生活レベルで過度に神経質になる必要はありませんが、ママ自身も就寝・起床のリズムをおおむね一定にするよう心がけたり、カフェイン摂取は1日200mg以下を目安にしたりしておくとよいでしょう。200mgはコーヒーをマグカップで2杯程度に相当します。食品中のカフェイン濃度については、厚生労働省のこちらのページをご確認ください。

妊娠中期の赤ちゃんは、週ごとにぐんぐん成長します。とはいえ、数字やタイミングは人それぞれ。 エコーの体重にも幅があるので、周りと比べるより「前回からのその子の変化」を主治医と一緒に見ていきましょう。
「ちょっといつもと違うかな?」と思うことがあれば、メモして健診で相談を。強い痛み・張りが長く続く・出血・水っぽい液体がにじむといったサインがあれば、待たずに医療機関へ連絡してください。
この時期は、やさしく声をかけたり、読み聞かせをしたり、穏やかな音楽を楽しんだりと、毎日の中で赤ちゃんと“つながる時間”を育むのにぴったり。妊娠後期に向けて、無理のないペースで体調に気をつけながら日々をおすごしください。

- 【監修】吉村泰典(よしむら・やすのり)
- 慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。