【小児科医・高橋孝雄の子育て相談】
子どもの可能性を伸ばすには、「褒める」ことがとても大切です

小児科医 / 高橋孝雄先生

得意なことは思い切り褒めて伸ばしましょう

得意なことは思い切り褒めて伸ばしましょう

I:子育てをしていて思うのは、苦手なことがあった場合、それをどれほどがんばらせるべきなのか、ということ。時間は有限なので、苦手なことをさせるより、得意なことをさせた方がいいのではないのかな、とか悩んだりします。

高橋先生:できないことを努力でできるようになることは大切なことだし、積ませておきたい経験ではあるけれど、得意なことをどんどんやらせてみた方がいいかなと思います。何ができないのか、苦手なのかを知ることも意味のあることですが、むしろ、できること、向いていることを子ども自身が見つけていくことの方が大事だと思います。

I:親としては得意なことを見つけてあげて、目の前に提示してあげるのがいいんですかね?

高橋先生:いやぁ、どうでしょうか。できることを見つけるのは子ども自身であるべきだと思います。そもそも親が先回りしてチャンスを与えても、そうそううまくいくとは思えません。

I:子ども自身で得意なことを見つけるべき…そうですよね。親はなにも口出ししないのがよいのでしょうか?

高橋先生:親御さんはお子さんをただただ褒め続ければいいんです。前より上手にできた時や優れていると思えることがあったら、チャンスを逃さずに思い切り褒める。褒められたらやる気が出て、また前向きになる。そうなればどんどん伸びると思うんですね。

そうは言っても、得意なことにも限界があって、伸び悩んだり、また上には上がいることを思い知る時が来るでしょう。それはそれでいいんです。そういう壁にぶち当たって、また成長していくものですから。

I:褒めながらも、壁にぶち当たったときは、ちゃんと寄り添ってあげることが大切ですよね。

高橋先生:そうです。中には、うちの子には得意なことなんてないですよ、勉強も運動もできないんだから褒めるところなんてありゃしない、という親御さんもいるかもしれない。でも、本当にそうでしょうか。じっくりお子さんを見てあげてください。絶対に褒めるところはあります。

たとえば、引っ込み思案のように見えても実はすごく優しくて思いやりがある、とか。それって本当に素晴らしいことで、勉強や運動ができることより、大切な“才能”だと思います。とにかくわが子の褒められるべきところを見つけて、しっかり褒めていただきたいですね。

I:自分のことをママ・パパがちゃんと見て、認めてくれるというのは子どもにとってはすごくうれしいことでしょうね。

高橋先生:褒める時には、お子さんとちゃんと向き合って、心の底から言葉をかけることが大切です。僕の妻は長女に「あなたは自分で決めたら、何でもやりとげるね」って言い続けていました。やりたいことを見つけて、失敗も多かったけれど…いいことも悪いことも(笑)、チャレンジする子でした。

一方、面倒見のいい次女にはいつも「優しいね~、ほんと、優しいね~」と声をかけていました。妻が娘たちに「こうなってほしい」とか、「あれを目指しなさい」とか自分の希望を押し付けているような姿を見たことがありません。娘たちはちゃんとその事を感じ取っていたようで、二人ともそれぞれの結婚披露宴の時にそのエピソードを話してくれました。「ママは私に“自信”をくれました。おかげで好きな道を歩んでいます」ってね。

I:いいお話ですね。奥さまは小さい頃からお嬢さんたちの長所をちゃんと認めていたんですね。

高橋先生:その子が乗っている上昇気流を下から見上げて、「いいね!」「その調子!」って声をかける感じですかね。僕には到底まねのできないことでした(苦笑)。

I:子どもが乗っている上昇気流を見上げる、ですか。子どもをひとりの人間として認めているからこそ、そんな視点が生まれるんでしょうね。

高橋先生:親が上から子どもを見て「もっと上に来られないの?」とか「早くここに来なさい」というスタンスでは、子どもも親も辛くなるのではないでしょうか。もちろんそれで成功される方もいるでしょうが、そうしたやり方で成功を勝ち取れる人がどれくらいいるのか…。親が先回りをして子どもに多くを望みすぎると、子どももそれにどう応えたらいいのかわからなくなって、自分の存在価値を見失い自己肯定感の低い子になってしまうかもしれません。

I:子どもに多くを望むことで、結果として親がわが子の可能性を摘んでしまったら元も子もないですね。

高橋先生:そうなんです。子どもが笑顔で元気でいてくれたら、それだけで素晴らしいことではないですか。僕らは病院で、文字通り命をかけて病気と闘っている子どもたちをたくさん見ています。そういうご家族に接していると、世の中の平均的なお子さんを育てておられる親御さんがとても恵まれているように思えてならないんです。そう、それはとても幸せなことなんです。

そのことに気づいてしまえば、「あの子よりお勉強ができない」「お友達より運動神経が鈍い」なんてこと、どうでもいいと思えるはず。他の子どもと比べて優劣を勝手につけて、モヤモヤするなんてもったいないこと。それよりも、もっと今のわが子を見つめて、たくさん褒めて、認めてあげていただきたいです。

I:考えてみれば、赤ちゃんの頃は、わが子が何かをできるようになると、「上手!」「すごい!」と大騒ぎで喜んで、褒めていたのに、できることが増えてくるほどに親は欲張りになってしまうのかもしれません。子どもに過剰な期待を寄せる自分に気付いたら、成長を素直に喜んでいたあの頃の気持ちを思い出してみようと思います。親としての姿勢を見直す機会になりそうです。ありがとうございました!

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