――ところで、言語能力はどういう段階を踏んで、いつごろまで伸びるものでしょうか?
皆川先生:思春期ぐらいには脳がだいぶ完成してくるので、それまでには言葉の能力もほとんど完成していると思われます。もちろん私たちは大人になっても語彙が増え、仕事や生活に必要な言語能力を身につけていきますし、その後の発達もありますけれど、高校生ぐらいが言語の成長の大きな節目と考えていいでしょう。
――前編のお話では言語の習得には聞く力も非常に重要になってくるということでした。聞く力に差が生まれるとしたら、どういう原因が考えられるのでしょうか?また何歳くらいまで言葉が出なければ、心配するべきですか?
皆川先生:私のラボの研究参加者に「子どもの聞く力に問題があるのではないか」と相談される親御さんがいます。そのような中には性格や環境が影響している場合もありますが、自閉スペクトラム症などの発達障がいであれば、人や人の話に興味を持たない、その結果話を聞かない傾向がみられることもあります。
皆川先生:環境要因の極端な例には、親のネグレクト(育児放棄)もあります。親が話しかけてあげなければ、子どもは言葉を習得できませんからね。でも性格や発達の速度は子どもによって違います。お子さんによっては4、5歳になって急におしゃべりを始めることもありますから、周囲の大人が愛情をもって接していて、指差しとか視線のやり取りなどでコミュニケーションが取れていれば、発話が遅くてもそれほど気になさる必要はないと思いますよ。
――言葉が出なくても意思の疎通があるとママ・パパが実感できていれば、それほど心配はしなくてもいいんですか?
皆川先生:コミュニケーションが取れているのに声を出さないというお子さんに対しては、発声の訓練が必要な場合があります。喉や喉頭は使わないと衰えてしまいますから、少しでも声を出したら、「今○○って言ったね、上手だね」とほめて、お母さん・お父さんが笑顔で同じ言葉を返したら、声を出すことは楽しいと感じてくれるかもしれません。
――話しかけても理解しているのかわからないという場合はどうでしょう?
皆川先生:理解しているのかどうかわからないし、発話もないのであれば、まずは自治体の保健所に相談していただくのが良いと思います。心理士やスピーチセラピストなど、言葉の問題の専門家を紹介してもらうこともできると思います。親が自宅でできる療育方法をペアレントトレーニングで学ぶ方法もあります。