――最後に頼りになるのは親。もちろんこうありたいですが、そうなるためにはどういう子育てをすればいいのでしょうか?
高橋先生:子どもに信じてもらうためには、たとえば秘密を持っていそうだなと思っても根掘り葉掘り聞かないことです。些細な隠し事はあって当たり前です。見過ごしてあげましょう。
――最後に相談できる相手として信用してもらうためには、常に知ろうとしない、すべてを把握しようとしない、適度な距離を保つことが大切ということですか。
高橋先生:そう思います。そして最後の相談相手は、女の子なら母親、男の子なら父親という具合に、同性の親の方が望ましい。もちろんシングルの場合はそういうわけにはいかないですし、同性でなければ最後の相談相手になりえないということではありませんよ。
――それはそうですよね。一方で、異性の親子関係についてもう少しお聞かください。異性の子は、成長するにつれて離れていくように感じる方も多いと聞きます。小さい頃は何につけても一心同体だった息子が思春期になって、すっと離れていくように感じる。または可愛い娘に嫌われたと嘆くお父さんの声もよく聞きます。まぁ、仕方ないことなのだろうと思いつつ、できることならずっと仲良しでいたいなと思うわけです(苦笑)。
高橋先生:お気持ちはわかります。ただし、生物学的には、人間の遺伝子は種を増やし、子孫を繁栄させるようにプログラミングされています。思春期に入った子どもと異性の親の関係は、精神的に受け入れられないものとして拒絶するように設計されているんです。近親相関を避ける自然の摂理と考えればピンと来るかもしれません。つまり成長した子どもに異性の親は関わらない方がいいということです。
――う〜ん、そうなんですか…。
高橋先生:思春期の入り口に差し掛かると、娘はお父さんに、息子はお母さんに「嫌い」、「うざい」なんて言うようになったりするんですが、そんな時は「わが子はちゃんと成長しているな」と受け止めるようにしましょう。
――えーっ、そんなことまで受け止めないといけないんですか(涙)。
高橋先生:次に心が解け合うのは、結婚する時かなぁ。すなわち誰かに持っていかれた時(笑)。
いずれにせよ、思春期に起こる異性の親子の断絶は、赤ちゃんのイヤイヤ期みたいなもので、来るべくして来るものなんです。もし本当に幸せになってもらいたいなら、しばらく子どものことは忘れて、その分パートナーを大切にしたらいいじゃないですか。
――本当に先生はいつも正論を言いますね(苦笑)。一応、食い下がりますが、最近はお母さんと男の子が一緒にショッピングを楽しんだり、お父さんと娘のツーショットをSNSにあげたりするなど、ちょっと状況が変わってきていませんか?
高橋先生:たしかにそれはそうですね。ただし、それって生物学的には不自然な行動です。成長した娘がお父さんを、息子がお母さんのことが大好きで、これ以上の異性はいないと思ってしまうのは、困ったことではないでしょうか。そうした親子関係の方が増えているのは、いろんな要因が考えられますが、異性の子どもとの関係は一度断絶するくらいの覚悟があってもいいのでは。
――じゃ、親は子どもが離れていくのを見守っていればいいと?
高橋先生:そういう時期が来たら、異性の子どもはしばらく見捨ててもいいかもしれませんよ。一方でお父さんと息子、お母さんと娘は親密になれるといいですね。親がどんな生き方をしているかということを子どもはちゃんと見ています。
つまり、お父さん・お母さんは子どもにとって一番身近なロールモデルです。同性の親を見て「あんなふうになりたいな」と感じるからこそ、大人になりたいと思い、成長するんですね。その逆の場合には、成熟した大人になることへの拒否感から、拒食症などの問題が起きる場合もあります。助けが必要な時にはちゃんと手の届く場所にいるけれど、いつもは見て見ぬふりができる。子どもが思春期を迎える頃は、そんな距離感がいいのかもしれませんね。
――今は夢中で子育てをしている日々ですが、その先にやってくる思春期のことも考えながら、わが子と向き合っていきたいと思います。今日もいいお話をありがとうございました。
かわいい赤ちゃんもいつか思春期を迎え、親離れをしていきます。ある日突然、子どもから「嫌い」、「うざい」と言われることがあっても、慌てず、騒がず「いい感じで成長してるな」と余裕をもって見守ることが大切なのですね。そんな余裕を持てるようになりたい、という自分への思いを込めて。