吉村先生:僕が考える男性妊活にはもうひとつ大切なポイントあります。それは当事者として育児に取り組む意識を持ち、それをパートナーにも「約束」することです。
2人の働き方、キャリアの形成、育休や休暇の活用法、子どもの世話・家事をどう分担できるかなどは妊娠前に話し合っておくべきこと。夫婦が力を合わせて、仕事と育児を両立する方法を考えておければ、子育てへの不安は少なくなるでしょう。それはプレママが安心して妊娠するためにとても大切なことだと思います。
I :プレパパが事前に「パパとしての自覚」を示すことは、もはや男性妊活とも言えるということですね。
吉村先生:そういうことですね。妊活に前向きになれないプレママの気持ちに向き合い、寄り添えるか。ご存知のように、少子化はコロナ禍になって一層加速しました。社会的不安が大きくなった状況では、子どもを産み育てるのは難しいと考えるのも無理もないでしょう。
吉村先生:我が国の男性の育児参加率は欧米諸国に比べて極めて低い。家事や育児をどう分担するかはコロナ禍でなくても考えなくてはいけないことで、子どもは2人で育てるという概念が当たり前になることが必要なんです。
I :妊活をはじめるときに子育てのことも話しあうべき――これも今までの男性妊活論にはなかったお話ですね。
吉村先生:不妊症の検査がどうだ、精子を増やすにはこんな治療がある、みたいな議論も否定はしません。それはそれで必要なこともある。でも、その前の段階として、女性のからだを知り、夫婦の生き方、家族のあり方を考えること、それこそが男性にとっての妊活だと思います。子どもができたらどのようにして育てるのか、育児や家事をいかに分担するのか、実際にできるのか、育休はどれくらい取るのか等々、じっくり話し合ってようやくスタートラインに立てるんじゃないかと思うんです。
I:男性不妊の傾向と対策についての医学的なお話をお聞きしよう…そんなイメージでお話を聞くつもりでしたが、まったく違った考えを教えていただきました。男性妊活を考え直す上で、大切な視点をいただけだと思います。今日もいいお話をありがとうございました!
“妊活”という言葉に、プレッシャーや困惑を感じるプレパパもいるでしょう。でも“妊活”はこの先の人生をパートナーとともにどう歩いていくかを考えるいい機会にもなるはずです。お互いへの思いやりを忘れずに、温かい家庭を築いてくださいね。
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。
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※1不妊治療に関する取組(厚生労働省/令和4年2月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html -
※2国家公務員に「出生サポート休暇」を新設(人事院/令和3年12月)
https://apj.aidem.co.jp/current/detail/3693.html
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※1不妊治療に関する取組(厚生労働省/令和4年2月)