――妊産婦さんは痔になりやすいと言われていますね。
寺田:寺田 おっしゃるとおりです。実際、妊娠初期から出産後1か月までの間に、40%以上もの女性が痔になり(※2)、そのうちの85%が妊娠中期・後期で発症している(※1)とのデータもあります。便秘などでもともと痔のあった女性が妊娠・出産を機に悪化することも珍しくありません。
――原因はなんでしょうか?
寺田:妊娠中期〜後期にかけて、妊婦さんは子宮が大きくなります。すると周りの血管や腸を圧迫し、血液循環を悪化(うっ血)させ、それが原因になることもありますし、妊娠中に便秘がひどくなり、痔を引き起こしやすくさせることもあります。女性ホルモンの分泌が盛んになることも、うっ血や便秘を誘発する原因になることがわかっています。
また出産時にできた会陰の裂け目や切開の傷を縫合することにより、肛門周囲の筋肉や神経が傷付き、痔の原因になることもあるようです。また「いきみ」が原因で痔になることもあります。
――妊娠中期〜出産直後までに痔の危険因子がたくさんある、というわけですね。先程、痔の種類は大きく3つあるというお話でしたが、妊産婦さんはどのタイプになりやすいのでしょうか?
寺田:圧倒的に「いぼ痔」です。先程も申した通り「いぼ痔」は性別問わずに、もっとも多い痔なのですが、妊産婦の場合は95%以上が「いぼ痔」だと言われています。
――95%!! ちなみに、「いぼ痔」は肛門内側にできる「内痔核」と肛門外側にできる「外痔核」の2種類があるとのお話でしたが、こちらは症状や痛みに違いがあるのでしょうか?
寺田:ええ、違います。内痔核は初期段階では痛みを感じません。肛門の内側の粘膜部分には知覚神経が通っていないので痛みを感じないためです。ちなみに排便時に痛くはないけれども、血がポタポタと出てくる場合は、内痔核である場合が多いです。
――痛くないのは不幸中の幸いとも言えますが、妊娠期間中に痛くないのにお尻から血が出てきたら…ちょっと不安になりますね。
寺田:そうですね。それが進行すると、排便のタイミングなどでいぼが外側に出てきたりもします。内痔核の症状には4段階あり、最初は痛みがないのですが、症状が進行すると痛みを生じることもあります。また、外側に出てきたいぼが戻らなくなり、血栓ができるものを「嵌頓(かんとん)痔核」と呼びますが、この状態になると、おしりが全体に腫れあがり動けないくらい痛くなることもあります。
一方、外痔核は肛門外側の皮膚の部分にできるのですが、そこには知覚神経が通っているので、強い痛みを感じます。出血はないことが多いのですが、急性の炎症を起こして血の塊(血栓)ができることもあります。
なお、外痔核より内痔核の方が5倍以上多い(※3)とされています。自分が痔かもしれない、と思った際はこちらのページで簡易のセルフチェックができますので、お試しください。