高橋先生:“かけがえのない青春期”とコロナ禍が重なった方もたくさんいます。コロナさえなかったら彼らはもっといろんなことができたのでしょう。そして、大人たちはそれを「かわいそう」と見るかもしれません。でも、自由が制限されたからこそ得た学びや視点も必ずあったはずなんです。そこの部分に光を当てることが、大人としてまずやるべきことだと思うんです。
I:ポジティブな影響だってあっただろうと。
高橋先生:他者を思いやる心とか、ルールを守る倫理観とか。なかなかできることではないですよ。それを、子どもたちも僕たちも我慢しながらやったんです。みんなよくがんばった。素晴らしいことだと思います。
I:ちなみに5月上旬の時点では、まだマスクをつけている人もたくさんいます。マスクをつける人、つけない人での軽い分断みたいなものも、微妙に出てくるような気もしていたり。そんな小さな諍いが、子どもに与える影響なんてことは……考えすぎでしょうか(苦笑)。
高橋先生:大人だけじゃなくて、子どもの間でもマスクを巡って軽いいざこざが起きることだってあるでしょう。でも、それはそれでいい経験になると思いますよ。仮に大好きな友だちと揉めたとして、それが悪い想い出になるとは限らないです。「あの時なんであんなことで怒ったり、喧嘩したりしたんだろう」と懐かしく思うときが来るでしょう。本気で悩み、考え、異なる意見がぶつかり合った、という経験は将来なにかの糧になるはずです。
大切なのはどんな困難に直面しても、子どもはそれを乗り越えることができるとかたく信じること。子どものために、大人たちは未来を向いてほしいと思うんです。不安はあるかもしれないけど、大丈夫ですよ。子どものチカラを信じて、一緒に前向きに生きていきましょう。
専門は小児科一般と小児神経。1982年慶應義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で診療と研究にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で医師、教授として活躍。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。