赤ちゃんが自分でスプーンやおもちゃをつかむようになった時、左手を使うと「この子は左利きかしら?」とちょっぴり戸惑うママ・パパもいるのではないでしょうか? そこで本記事では、昭和女子大学で身体教育学を研究している山中健太郎先生に「左利きの子どもを育てる時に知っておきたいこと」について伺いました。
(※本記事は2018年9月27日公開記事を一部修正した“再掲版”となります)
左利きになる確率は10人に1人
左利きの人は、人種や男女、年齢を問わず10人に1人の確率で存在すると言われています。左利きについては長年研究されていますが、その原因やメカニズムは今でも多くの謎につつまれている、と語るのは昭和女子大学で身体教育学を研究している山中健太郎先生。
「遺伝子で決まる血液型や性別とは違って、両親ともに左利きでも子どもが左利きになる確率は約25%程度とされ、遺伝子が同一である一卵性双生児が2人とも左利きになるわけでもありません。
遺伝的要因についてはこれまでのところ、左利きを決定づける単一の遺伝子座(=染色体上の遺伝子の位置)は特定されておらず、遺伝的要因については少なくとも複数の遺伝子座が複合的に関与していると考えられています」(山中先生)
利き手を決定づける要因は、研究の最前線でもはっきりしていないそう。また「言語を操る脳と利き手は連動している」という説もありますが、こちらも不確定要素が多いとのこと。
「昔から、言語中枢が左脳にある場合が多いことが知られており、(手足はおもに反対側の大脳半球によって操られているので)右利きの場合は言語中枢と同じ左脳で利き手を操作していることになります。
ここから、言語中枢と利き手に関係があるのでは、と考えられたのですが、左利きの場合は言語中枢が必ずしも右脳にあるわけではありません。つまり言語を操る脳と利き手が完全に連動されているとは言い難いのです」(山中先生)
また、「利き手は胎児のときのからだの向きによって決定する」(※1)といった論文もあるなど、左利きについての研究が多面的になされていますが、決定的な原因は見つかっていないそう。
「今の時点で言えるのは、左利きは、多くの要素が複雑に絡み合って起きる現象なのではないかということ。先天的なものもあれば、生まれてからの環境の中で育まれる部分もあるということかもしれません」(山中先生)
ちなみに利き手が決まる時期については、それぞれ個人差はあるものの、3歳、4歳の頃にはっきりすると言われているとのこと。
「たとえば2歳ぐらいまでの子どもの場合、左手をよく使うように見えても左利きとは限りません。片方の手しか使わない時期には、なかなか判別できないのです。その後、3歳〜4歳くらいになって、両手を同時に使うようになればわかること。
例えば食事の時に左手でフォークを扱い、右手でお皿を抑えるようになれば左利きです。つまりどちらがメインでどちらが補助か。逆にいうと両手で物事をしない時期に、右手を使おうが左手を使おうが、それはあまり意味を持たないと思っていただいて結構です」(山中先生)