これまで見てきたように、生活面でのいろいろな変化に対応するべく準備していくなかで、ふと、「私にこんな生活ができるのだろうか?」と思うこともあるかもしれません。堀江さん自身も、復職できるかなと心配になったことがあったそう。
「仕事に戻りたかったものの、『何かあったらどうしよう』と他人に子どもを預けることが不安になりました。そんな気持ちを夫に告げて、でも仕事も頑張りたいということも伝えました。ここで気をつけたいのが、働きたい気持ちがあるからこそ不安なことをパパにわかってもらうこと。不安だけを口にすると、男性はその解決法として、仕事をやめて専業主婦になることをすすめるかもしれません。そうではないことをきちんと表現することで、パパの理解を得られ、その後の家事や子育ての分担もスムーズに行えます」(堀江さん)
職場への復帰の挨拶は、保育園が決まったあとに行います。堀江さんは、事前に連絡し、子どもを連れて職場へ行くことをすすめます。
「実際にその場所に戻ることで、ポジティブな気持ちになれます。また、子どもを見せておくことで、『こんなに小さい子を預けて働くんだな』ということを上司や同僚にわかってもらう意味もあります。そして、悩んでいることがあれば、こういうところが不安と具体的に上司に伝えておくこと。時間外労働はできないけれど、頑張りたいですという気持ちを表しておくといいのではないでしょうか」(堀江さん)
これからまた一緒に働く人たちに、まずは自分がどんな状況で仕事に復帰し、子どもも育てていきたいかを共有しておきましょう。
最近は、育児休暇中の社員がスムーズに職場に戻れるよう、企業側が復帰前に子どもを連れて参加できるミーティングを開催するところもあります。
左の写真は、ミキハウスでの「ママ&ジョブミーティング」の様子。育休中の社員が赤ちゃんと一緒に会社にやってきて、子どもを保育園に預けて働く先輩ママ社員からアドバイスをもらったり、人事の担当者と話ができる時間が設けられました。先輩ママたちは、「職場復帰までに断乳した」「子どもとの初めての別れはちょっとさびしかった」といった復帰までの道のりや、「夫とはたくさん話して、もめごとのないようにしている」「平日の家事は少しぐらい手抜きになってもいい」など復帰後の生活について話を。また、復帰した先輩たちのふだんの1日のスケジュールを聞き、「人によって生活のパターンは全くちがうのだなぁ」と驚いたり、感心したり。育休中のママたちは今回のミーティングによって、職場復帰への具体的なイメージが描け、気持ちを新たにしたようでした。
誰にとっても育休明けの職場復帰は、簡単なことではありません。パートナーやまわりの人と協力し、一人で背負わないこと。いろいろな準備をし、一つずつクリアにしていけば、復帰が不安ではなくなるはずです。
【プロフィール】
堀江咲智子(ほりえ・さちこ)
ワーク・ライフバランスコンサルタント
株式会社ワーク・ライフバランス所属。大手メーカーで女性活躍推進プロジェクトを任され、女性授業員が働きやすい職場にするための施策を立案、実施。そのことがきっかけで、同社所属となり、働き方見直しの提言を行うコンサルタントに。2013年12月に第1子を出産し、翌年4月職場復帰。タイムマネジメントの知識と経験を子育てと仕事の両立に生かしている。