増加傾向にある「二人目不妊」の実態 
日本社会に横たわる“二人目の壁”とは

ミキハウス編集部

社会的な背景から見る「二人目不妊」の問題

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慶應義塾大学名誉教授で、産婦人科医でもある吉村泰典先生はこのように語ります。
「“二人目の壁”は社会にあるあらゆる問題が複雑に絡み合って、夫婦の前に立ちはだかっているものです。あるひとつのことを解決すれば、それがなくなるという類のものではありません。ただ、男性側の“意識”(や行動)を変えることで状況が改善することだけは明らかです。まずは、こちらのデータを御覧ください」

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「これは2011年の内閣府男女共同参画局の調査から抜粋したものです。実は、夫の休日の家事・育児時間と第二子以降の出生割合にはきれいな相関関係があります。つまり、夫が積極的に家事や育児を手伝う家庭ほど、第二子以降の子どもが生まれている家庭が多い。ここから分かることは、二人目を授かるためには、夫の家事・育児への協力は不可欠になります。特に家事。掃除、洗濯、料理、買い物……ただでさえ子育てで疲れている妻に、さらに“家の仕事”まで押し付けているようでは絶対にいけません。そういう意味では、夫の意識改革が必要ですし、同時に『(働く男性が子育て参画しやすくなるような)社会的な環境の整備』が欠かせないということです」

さらに吉村先生は「妻の結婚年齢別にみた、一家庭の子どもの平均人数」のデータを取り上げます。

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これによると、結婚年齢が20歳〜24歳の場合、その数は2.08人と“二人目の壁”を超えていることがわかります。また、35歳〜39歳での結婚の場合、授かった子どもの数は1.16人。結婚年齢と子どもの人数にはこうした相関関係があるのです。

「未婚化・晩婚化・晩産化が日本で問題視され始めたのはここ10年のこと。そうした状況が“二人目の壁”をつくっているわけですから、そういう意味では、これは個々人の問題というより社会全体の問題なのです。かつて少子化を克服した一部欧米の国々では、子育てをしながら仕事ができる社会システムを整えたり、婚外子を認める文化・風潮を醸成したりと、子どもを産み育てやすい社会をつくることで状況を立て直した経緯があります。日本も、そうした部分を改善していかないと、“二人目の壁”の根本解決には至らないでしょう。

また、若い頃から男女ともども『子どもは何人ほしいのか』『そのためにはいつまでに結婚した方がいいのか』というライフプランを立てる力を養っておくことも重要です。同時に、教育の現場で30代後半になると妊娠率が下がるといった医学的な事実をきちんと教えておくことが大切になってくる。こういうことを言うと、決まって“女性の社会的権利を制限しようとしている”などと批判の声を上げる方々もおみえになりますが、私は産婦人科医として、こうした事実はもっと多くの方が認識されるべきだと思っています」(吉村先生)

 

※   ※   ※

今回は二人目の出産を望みながら、なかなか妊娠に至らない“二人目不妊”の実態にフォーカスしつつ、さらに社会的な背景に着目して“二人目の壁”というものを考えてみました。

いずれの問題も、夫婦個々人だけでなく、社会全体に問われている現代の課題と言えそうです。それだけに“二人目の壁”を超える方法は簡単なことではありませんが、なるべく多くの人が自分ゴトとして、この問題を考え、そして解決するための道を模索していく必要があるのかもしれません。

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