妊娠を知ったママとパパは幸せな気持ちでいっぱいのことと思います。でもこれから、ママは初めて経験する体の変化に戸惑うことも多くなります。ママの体はどんなふうに変わっていくのか、赤ちゃんのためにどんなことに気をつけたらいいのかなど、いろいろ知りたくてネットで検索…でもネット上には、あまりにたくさんの情報が溢れていて、何が正しいのかを見極めるのはとても難しいことではありませんか?
たとえば食べ物のこと。あるサイトでは健康によいとされる食べ物が、別のサイトではむしろ健康を害するとされていたり。逆に、「食べてはいけない食材」と名指しされている食品が、別の情報サイトでは1日●グラムまでなら問題ありませんなどと書かれていたり……。
そこでミキハウス「出産準備サイト」では、「妊娠中のママが知っておきたい食べ物のこと」について取材しました。最先端医療の担い手である東京女子医科大学産婦人科の堀部悠先生に伺ったお話を基に、前後編の2回に分けてお届けします。
前編となる今回は、おなかの赤ちゃんがすくすくと育ち、ママも元気に妊娠期間をすごすために知っておきたい基礎知識について、続く後編「妊婦が本当に注意すべき食材について」では、妊娠中の食べ物について気をつけるべきことを紹介していきます。
いくつかのポイントを知っておくと、ママは食べ物を前にしてあれこれ迷うことが少なくなるかも知れません。ママとおなかの赤ちゃんの健康を守り、体を作る食べ物について、学んでいきましょう。
ママが口にした食品は胎盤を通じて胎児に届きます
ママのおなかの中に芽生えた新しい命は、約10か月間かけて成長し、この世に誕生します。ママは、自身のおなかの中で新しい命が育ちつつあるという現実に命の神秘を感じ、パパもどんどん大きくなっていくママのおなかに、赤ちゃんの存在と成長を実感するでしょう。
まずは堀部先生に、ママと赤ちゃんを結び付ける“要”である胎盤について伺いました。
「妊娠するとママの子宮の中には胎盤がつくられ、ママの血液はいったん胎盤を通過してから、臍帯静脈(さいたいじょうみゃく)を通って赤ちゃんの体内に送り込まれ、栄養と酸素を届けます。胎児側からは、老廃物を含んだ血液が臍帯動脈で胎盤に送り返されます。胎盤には血液の流れを促すポンプとしての役割とそこを通るものを選別するフィルター機能もあるんです」(堀部先生)
ポンプ機能とフィルター機能を持ち合わせている胎盤。分子量が大きい物質に関しては、胎盤を通り抜けることができないそうです。
「胎盤のフィルターを通り抜けることを胎盤通過性があると言います。ただ、ほとんどの食品は分子量が小さいので胎盤通過性があります。つまり基本的にママが口にした食品は胎児に届きます。一方、薬の成分や病気の自己抗体の中には、分子量が大きく胎盤を通り抜けられないものもあります。なので胎盤通過性がない薬などは、胎児に影響が及ばないことになります」(堀部先生)
胎盤通過性ついては、後編の「妊娠中に気をつけるべき食べ物」の章でも具体的な食品をあげて説明しますので、この言葉を覚えておいてくださいね。
胎盤には代謝やホルモン分泌に携わったり、免疫や抗体を作ったりと、赤ちゃんがまだ自分ではできない体の機能を肩代わりする働きもあるそうです。胎盤はママと赤ちゃんを結び付けているだけではなくて、赤ちゃんを守り、育てるものなのです。