吉村:キュリー夫人というノーベル物理学賞と化学賞をとった人がいるでしょ。彼女は研究をやりながら、子育てもきちんとやったそうです。ある時、「どうして子育ても立派にされたんですか?」と聞かれて、彼女はこう答えたそうです。「研究は立派な社会貢献。そして社会に出ていく子どもを育てるのも、立派な貢献です」。いい言葉ですよね。子育てなんて…と思っていると、これは大きな間違い。子どもを育てることは国家の根幹を揺るがす大切な問題だということなんです。子育てがうまくいかない国は絶対ダメ。だから、子育ては大事だと思います。
伊集院:今聞いて、違う責任感を感じました。
吉村:子どもを男が育てると「イクメン」ということ自体が本当はおかしくてね。そもそも、子どもは二人で育てていくんだから、何らかの役割分担をするでもいいし、それぞれの家庭でそれぞれのやり方を考えればいい。二人で育てていくという意識を持つことは基本ですから。忙しい父親でも、何もできないということは絶対ないと思いますよ。
伊集院:育児って大変だ、苦しいというイメージしかないという人も多いかもしれませんが、そんなことないんですよね。育児での経験を仕事に生かせる場面もありますし。
お母さんにも言いたいのですが、父親に子どもを一度まかせてみてほしい。専業主婦のお母さんに聞いたことがあるのですが、「ダンナに1日子どもを預けるのは怖くてできない、出かけられない」と言うんですね。でも勇気をもって預けて、父親と子どもを二人きりにしてほしい。男はやってみたら大変さがわかるし、意外とできた!と思うこともあるはず。やる前は「めんどうくさい」と思っていたことが、そうではなかったことに気づくと思います。
――お二人のお話、いかがでしたか? 時代は違っても、お二人が奥さまのやりたいこと、キャリア、特性を考えてイクメンになったこと、またお子さんのことを第一に思い、大切に育て、家族の絆をはぐくんでいったことがよくわかったのではないでしょうか。
これから子どもをもち、育てる予定の“プレイクメン”の男性に、吉村先生と伊集院さんの子育てに関して感想を聞いてみました。
30代男性・既婚
「どの時代でも、自分の置かれた環境の中で、全力で子育てと向き合う姿勢が『イクメン』と呼ばれているんだなと感じました。お二人と同じようなことは、今、自分の置かれている仕事の環境やワークスタイルを考えてみると、正直、難しいかも知れないとも思います。でも、『10%でも20%でも奥さんと一緒にどんなふうに子育てと向き合うか考えることが大切』という言葉があるように、仕事も含めたライフスタイルの中で自分らしいバランスを考えていきたいです」。
30代男性・既婚
「お二人の子育てに向かわれる気持ちには、とても感銘を受けました。『子育て』というと自分を犠牲にして、家族に貢献する、というイメージを持っていたのですが、そうではなく、自分自身が楽しみながら、子育てに貢献する方法を考えることで、無理なく、続けていけるようにする。その工夫がとても大切なんだと思いました」
父親が育児をすることは決して難しいことではありません。どんな家庭を築きたいか、どんなふうに子どもと関わっていきたいかなど、夫婦で話し合いながら、子育ての時間を楽しむ。これがいちばん大切なことなのかもしれません。