一日の最高気温が摂氏35度以上になる「猛暑日」が、気象庁の予報用語として定義されたのは2007年のこと。その頃から夏の気温はどんどん上がり、40度を上回る気温が観測され、「酷暑」と表現されることも珍しくなくなりました。関東地方の梅雨明けが早かった今年の夏は、7月18日には群馬県館林と埼玉県熊谷ですでに14回の「猛暑日」が記録され、これからも厳しい暑さが続くことが予想されています。
暑い夏の日は、大人でも戸外にいるのはつらいですね。体が小さい赤ちゃんは、気温に影響を受けやすいのでなおさらでしょう。赤ちゃんが夏を元気に乗り越えるために、ママ・パパはどんなことに気をつければいいのでしょうか。
シリーズでお届けする「真夏の子育て」の第1部は、熱中症の予防と対策について。東京都港区の愛育クリニック(旧愛育病院)で、小児科部長としてご活躍中の渋谷紀子医師にお話を伺いました。
熱中症予防の基本 環境に気を配り、水分補給はたっぷりと
熱中症は、高温多湿な環境に長くいることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまうことで起こる病気です。主な症状は、めまいや立ちくらみ、頭痛、吐き気、だるさなど。消防庁のデータでは、今年も4月30日から7月8日の時点で、全国で11,210人(※1)もの人が熱中症で救急搬送されています。
「赤ちゃんに限った話ではないかもしれませんが、熱中症予防に有効なのは、まず環境に気を配ることです。暑い日中に、屋外に長時間留まらないこと、また長時間直射日光の下で遊ばせておかないことは基本ですが、室内でもエアコンを上手に使って、暑がりの赤ちゃんが快適にすごせる環境を整えてあげてくださいね。もちろん屋外に行く時は、帽子は必須です。赤ちゃんは直射日光を浴びて頭が熱くなると、体全体が熱くなってしまいます。帽子をかぶっていない場合、ママの日傘の中に入れたり、ベビーカーの日よけを下ろして日光が当たらないように気をつけていただきたいです。また日よけのついたベビーカーで移動する場合でも注意が必要です。ベビーカーに乗っている状態は、猛暑で熱を持った地表の影響を(ベビーカーを押している)大人よりも受けやすいですからね」(渋谷先生)
また赤ちゃんの体は、自律神経の働きが未熟で、放熱や発汗による体温調節が十分に発達していませんが、新陳代謝は活発。そのため汗や尿として体から出ていく水分が多く、大人に比べて脱水を起こしやすいとのこと。当然、熱中症予防のために十分な水分補給は欠かせません。
「水分補給もこまめに、が基本となります。ただ、2歳ぐらいまでの子は、自分からは欲しがることも少ないと思いますので、室内でも2~3時間おきにはあげた方がいいですし、屋外なら1時間ぐらいを目安に水分をあげてくださいね」(渋谷先生)
消防庁は室温が28度を超えないように、エアコンや扇風機を利用することを呼び掛けています(※2)。ただし、冷たい風が直接赤ちゃんに当たらないように、風向きやベビーベッドの位置を工夫しましょう。
また日本気象協会でも熱中症について知ってもらい、身近にある熱中症の危険に気づいて、熱中症対策の正しい行動を呼びかけるために、“熱中症ゼロへ”と言う特設サイト(https://www.netsuzero.jp/)を開設しています。地域の熱中症情報も毎日更新されていますから、外出の予定がある日はチェックしておくと、役に立ちそうです。