連載「高橋たかお先生のなんでも相談室」 
小さな子どもにとって
「競争」は必要でしょうか?

相手の顔が見えない競争に、幼い子どもを巻き込むべきではありません

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高橋先生:あと、これは言っておきたいのですが、子どもの頃の競争っていうのは相手の顔が見えていることが不可欠です。

I:相手の顔が見えている競争……えっと、それはどういうことでしょうか?

高橋先生:相手と対面して、実体験のなかで競争することで、勝つということ、そして相手が負けるということ、あるいは自分が負けるということをちゃんと体験する必要があります。勝って思わず「やった!」と叫んでみたものの、負けたお友だちが肩を落としているのを見てハッとする。逆に、自分が負けて悔しいときに相手が喜びながらもねぎらいの言葉をかけてくれる。相手の顔が見える競争を通じて、勝った嬉しさ、負けた悔しさを積み重ねることで、成功することの喜びと同時に他者への思いやりが育まれると思うんです。特に幼児期から小学生にかけては、遊びの延長線上にある競争をたくさんさせてあげるといいと思います。逆に相手の顔が見えていない競争――例えばテレビゲーム、ネットゲームなどは実体験ではなく疑似体験、バーチャル体験です。実際に野球の試合を経験してこそ、野球ゲームでも勝つことの楽しさ、充実感を得ることができるようなります。全ての疑似体験は、実体験を積んでこそ価値あるものになるのです。

I:たしかに実体験をしていないと、バーチャルな世界にリアリティを感じることはできないかもしれませんね。

高橋先生:教育の世界で使われる“偏差値”も、ある意味でバーチャルな競争です。校内試験はともかく全国規模の試験となれば、もはや見えない無数の相手との競争です。大きな集団の中で、見えない相手と競争して、その結果が偏差値というもので数値化され、自分がどの位置にいるかということを思い知らされるんです。それはそれで必要だし、いい効果もあるでしょうが、上に行けば上に行くほど終わりのない過酷な競争となるものです。つまり上には上がいる。逆に、下に行けば下に行くほど無数の相手に負け続けている感覚になる。誰と争っているのかわからない。将来は受験などでそんな競争にも勝ち抜かなきゃならないことはあるにしても、小さな子どもの頃から見えざる敵と競争させるのはまずいと僕は考えています。

I:先生のご意見としては、小さな子どもにも競争は必要である、その競争は相手の顔が見えるもので、勝った喜び、負けた悔しさなどを体感できるものであるべきだ、というわけですね。そのような競争を通じて、子どもは多くのことを学ぶと。たしかにそうかもしれませんね。

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