連載「高橋たかお先生のなんでも相談室」 兄弟姉妹の育て方は「比べない」「優劣をつけない」が基本

連載「高橋たかお先生のなんでも相談室」 
兄弟姉妹の育て方は
「比べない」「優劣をつけない」が基本

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日本の女性が生涯に産む子ども人数は、ひとりあたり1.42人(※1)。この数字だけを見ると、ひとりっ子が多いのかと思われがちですが、子どもがふたりいる家庭は全体の54.0%(※2)、3人以上は21.2%、子どもたちの4人に3人は兄弟姉妹とともに成長しているということになります。

かけがえのない存在の兄弟姉妹。でも、小さいうちはちょっとしたことでケンカをしてママ・パパを困らせることもありますね。彼らがお互いの存在を認め、育ち合う関係になってていくために、親は子どもたちにどう接すればいいのでしょう。自らも3歳と8か月の2児のパパであるミキハウス出産準備サイトのスタッフIが、慶應義塾大学医学部教授の高橋たかお先生に「仲良し兄弟姉妹に育てるコツ」を伺います。

 

兄姉が弟妹に「嫉妬」しないようにするために、親がやるべきこととは

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I:先生には以前ひとりっ子について伺ったことがあります(参照:連載「高橋たかおの何でも相談室」ひとりっ子はわがままに育つ…‥なんてことはありません)。その時に教えていただいたのは、ひとりっ子と兄弟姉妹のいる子は、性格や社会性といった本質的な部分は変わらないけれど、違いがあるとしたら、親子関係の違い、ママ・パパの接し方ではないかということでした。そこで今回は兄弟姉妹の育て方について伺いたいと思います。

高橋先生:ふたり以上の子どもを育てる時にどうしたらいいのか、ということですね。わかりました。

I:たとえば、親からすれば兄弟姉妹を比べているつもりはなくても本人は比べられていると感じていたり、どこか差別をされているんじゃないかと感じてしまうところもあるんじゃないかと思うんです。ママやパパはそんなつもりはなくても、子どもはそう感じてしまうかもしれない……難しいものです。

高橋先生:お兄ちゃんやお姉ちゃんが、生まれてきた赤ちゃんに嫉妬するなんてことはよくあることで、むしろ微笑ましいことですよね。2018年に日本でも公開されたアニメ映画『ボス・ベイビー(The Boss Baby)』は、まさにそんなシーンからはじまります。ひとりっ子として育てられてきた7歳の少年・ティムの家に、ある日赤ちゃんが連れてこられる――あの作品は弟や妹ができると知った時の子どもの心境を、コミカルに、そして優しい目線で描いていると思います。兄弟姉妹の間で軋轢(あつれき)が生じたり、何かと競争心が生まれてトラブルに発展してしまうとすれば、その原因のひとつはママ・パパの取り合いですよね。

I:そこですよね。これはもう仕方ないことだと思うんですが、上の子ってそれまで両親の愛情を“独占”できていたけど、ある日下の子が生まれると、以前のようにはいかなくなります。そうなると嫉妬するのも当然といえば当然なんだろうなと思ってしまう。

高橋先生:赤ちゃんがママのお腹の中にいる時から嫉妬するくらい子どもの感性は豊かです。妊娠中のママが上の子の微妙な変化に気付いて、でも原因が思い当たらず、私の外来にこられることもありますよ。弟や妹ができたらママやパパの愛情が半分になってしまうのではないかと、上の子が案じるのもある意味仕方のないこと。僕は、それはそれでいいと思ってるんです。兄弟姉妹が二人、三人と増えるということは、そういうことですからね。

I:そうですよね……。「それをわかってくれ!」と2歳、3歳の子どもに言っても理解されないでしょうけど(苦笑)。

高橋先生:そうは言っても、下の子に手がかかって大変な時期でも、上の子にもちゃんと心を配ってあげないといけない。下の子が眠っている時間を見計らって上の子と遊ぶ時間を作るとか、パパと交代で上の子の面倒をみるなど工夫して、親子の関係が急に変わってしまったわけではないことを実感させてあげてほしいと思います。

上の子も下の子も同じように接してあげることが大切です。

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I:親としては、上の子は下の子の存在に敏感になるってことをわかってないといけませんよね。

高橋先生:だからといってはれものに触るように接する必要はありませんよ。仮に下の子ができたことで、上の子が「赤ちゃん返り」するなら、させてあげればいい。「抱っこして欲しい」と言うなら、たくさん抱っこしてあげてください。要は上の子も下の子と同じように接してあげることが重要なんです。

I:同じように接する、ですか。

高橋先生:親ができることとしては、愛情を子どもの人数にあわせて「大きくする」ということかもしれません。ひとりっ子の時に子どもに与えていた愛を100とすると、二人目が生まれたら50ずつ平等に愛を分け与えるのではなく、100と100で愛を注ぐという気持ちで接してあげることだと思うんです。

I:現実的にはなかなか難しいとは思うのですが、そういう意識を持って接するということが大切ということですね。

高橋先生:そうです。そりゃ、愛情を100、200、300と増やしていく、というのは現実的ではありませんが、二人目、三人目と子どもを授かったのを良いチャンスとして、親としての愛情もより大きなものに膨らませていくことは可能だと思うんです。ママやパパは兄弟姉妹に優劣をつけない、順位付けをしないということが重要です。例えば今は下の子に手がかかるからと上の子の気持ちをないがしろにするとか、あるいは上の子がもうじき小学校のお受験で大切な時期だからと下の子の生活のペースまで変えてしまうのは、どちらかの子どもを優先するために、どちらかに犠牲を強いていることになりますよね。子どもたちはそういう変化にとても敏感です。他の何よりも「愛情の不公平感」に寂しさを感じるんでしょうね。

I:兄弟姉妹のために、なにかと我慢させるのはありがちな話ですが、可能な限りそういうことは止めた方がいいんですね。

高橋先生:そう思います。また「お兄ちゃんはあなたの年ではできていたよ」とか、「弟(妹)でもこれくらい言えるよ」など、ダイレクトに比較する言葉を投げかけるのは止めた方がいい。特に本人たちの前で一方的にネガティブな決めつけをすることは避けるべきです。

I:ですよね……ただ、これを読んでいるママやパパの中には「ハッ」とした方も多いかもしれません。親本人は比べるつもりは全然なくても、比べてしまっている可能性はあるのかなと。わが子を傷つけるつもりはないし、どちらかと言うと頑張って欲しくて言ってしまう言葉でも、子どもは比べられていると感じてしまうかもしれません。

高橋先生:そこは難しいところですよね。これは子育て論でも医学でもないですが、ママもパパも「子どもたちみんなに幸せになってほしい」と心から願っていればそれでいいのでは。仮にちょっとした言葉で傷つけてしまったとしても、幸せになってほしいという気持ちで愛情を持って接していれば、それは絶対に伝わっているはずですから。そういう気持ちがあれば、ただただお兄ちゃんばかりをひいきする、妹ばかりをかわいがる、なんてことにはならないだろうし、子どもだってそうは感じないと思うんですよ。

仲のよい兄弟姉妹にするためには、ママ・パパと一緒に下の子のお世話をさせること

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I:生まれてくる弟や妹に嫉妬するタイプの子どももいれば、小さい頃から下の子をものすごくかわいがる子もいるじゃないですか。ちなみにウチの3歳の娘は、8か月になる弟をものすごいかわいがるんです。嫉妬なんか全然しなくて、見ててちょっと危なっかしいくらい、ベタベタとお世話をしています(笑)。素朴な疑問なのですが嫉妬するタイプと、その真逆のタイプ、この差はどこから生まれてくるのでしょうか?

高橋先生:その子の性格にもよるでしょうし、ママとパパが上の子にそれまでどう接してきたかにもよるし、下の子との年齢差も関係してくると思います。ひとつ、仲のいい兄弟姉妹になってほしいのであれば、上の子に下の子のお世話をさせてあげるのは良いことですよ。危なっかしくてちょっと心配でも、ママと一緒に下の子の世話をしていれば、上の子はママとの一体感を実感できるし、下の子をかわいがることが何よりも楽しくなるでしょう。あと一緒にお世話をしている時にママ・パパが上の子に「あなたもこんなにちっちゃくて、こんなに可愛かったのよ」と言葉にして伝えるのもいいでね。

I:ちゃんとフォローをするというか、お兄ちゃんやお姉ちゃんにも愛情を注いでいることを、しっかり伝える必要があるということですね。

高橋先生:はい。兄弟姉妹というのは結局は仲良し同士です。すごく身近な存在であることが災いして、ちょっとした考え方の違いなどからいさかいが絶えない時期があったりもしますけれど、親の愛情に包まれて育っていけば、いずれはお互いを思いやり、助け合うようになります。

I:そうですね。僕にも離れて住んでいる兄弟姉妹がいるんですが、たまに会うと子どもの頃の思い出がたくさんよみがえるし、何となく気の置けない相棒という感じもします。これが小さい頃から一緒にすごしてきた絆なのかもしれません。子どもたちにもお互いを大切にできる関係になってもらえたらと思います。今回もいいお話をありがとうございました。

 

〈参考文献〉
※1 平成30年(2018)人口動態統計月報年数(概数)の概況(厚生労働省/平成31年6月)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/kekka30-190626.pdf

※2 現代日本の結婚と出産―第15回出生動向基本調査報告書―(国立社会保障・人口問題研究所 2017年3月)
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_reportALL.pdf

 

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<プロフィール>
高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 専門は小児科一般と小児神経 1982年慶應義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

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