【専門家監修】乳幼児教育 本当に大切な「学び」とは〈後編〉

2021.09.02

ミキハウス編集部

「非認知能力」が育っていれば、「認知能力」は身につきやすい

「非認知能力」が育っていれば、「認知能力」は身につきやすい

――「認知能力」はテストの点数や達成度で客観的評価が下せます。一方でそうした尺度で測れない「非認知能力」について、いかに育っているのかを知るのは難しいですよね?

浜口先生:そうでしょうね。近くにいる親にはかえってわかりにくい面があるかもしれません。親の目には、困った子、扱いにくい子に見えても、それがしっかりした自我のあらわれである場合も多いものです。逆に「手がかからない」「言うことをなんでもきく」ような、いわゆる「いい子」の方が実は心配な子だったりする場合もあります。

心配だったら、第三者に印象をきいてみたり、園の先生など専門家の意見をきいてみるといいでしょう。甘えてくる、自己表現をする、好きな遊びがある、気持ちが通じる、すぐあきらめない…などは大切でしょう。

――「非認知能力」は乳幼児期でないと育ちにくいものですか? 成長してからでは遅いのでしょうか?

浜口先生:環境が変わって、周りの人との関係性が変化すると人間は変わるものです。ですから「非認知能力」はいくつになってもそれなりに育つと思います。でも、「認知能力」が発揮される学童期以前に育むことが特に大切なんです。課題に取り組む意欲とか、持続力、忍耐力などを発揮して、「なぜ?」とか「どうしてこうなるの」と興味を持って深く学ぶ態度が育っていると、勉強は面白くなるし、身に付いていくでしょう。

――ある意味、今現在の構造ですと、小中高、そして大学と「認知能力」だけで競争を勝ち抜いていくことが可能です。しかし、一方で認知能力だけに注力した結果、社会に出てから困る人も少なくないと個人的には感じています。それどころか、学生時代は「認知能力」だけで測られていた尺度が、社会に出てからやたらと「非認知能力」を求められていることが多いなとも思います。仕事をする上でも、親になって子どもを育てる時にも、「非認知能力」は欠かせないものだと実感しています。

浜口先生:たしかにおっしゃるとおりかもしれません。それくらい、非認知能力は生きる上で大事な人間性の土台だと思います。子育てする上でも、なにか特別なことをするというより、とにかく子どもの気持ちや思い、言葉に耳を傾けてみてください。そして必要なお世話はするけれど、あとは子どもの成長を見守って、そっと支えてあげてください。

最後に一言。わが子を心配するあまり暗い表情でそばにいる大人ほど、子どもにとって有害なものはないと思っています。鏡でときどきどんな顔をしているかなと確かめてみるといいかもしれません。子どものせいで不機嫌になっている雰囲気は子どもを傷つけます。

たとえば、顔と顔を突き合わせて真正面からきつく叱られている子どもが、どうしたらいいかわからなくなったんでしょう、思わずニヤリとしてしまい、「なんで笑っているの!」と一層きつく怒られている光景を見ることがあります。あれは、「そんな怖い顔をしないで笑って」という子どもの祈りのようにも見えます。

子どもが自分の思い通りにならなくても、それが子どもだと思える楽天性思い通りになったらかえっておかしいかも、と思えるような客観性がある親は、子どもにとって救いになるでしょう。それは「非認知能力」の育ちと関係していると思います。

――わが子が自分らしさを発揮して充実した人生を送ることを願うなら、まずは親子の信頼関係から共感力を育て、思いやりとか好奇心、忍耐力といったその他の「非認知能力」も伸びるようにママ・パパは一歩引いて成長を支えることが大切なんですね。今回の先生のお話、私たち親にとっても大切な学びになったと思います。ありがとうございました!

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