I:続いて伺いたいのは、叱られるといじけてしまう子への対応です。良かれと思って注意しているのに、子どもがうつむいたまま返事もしないと「親の言葉が納得できないのだろうか」とイライラしてしまうことがあるのですが、ああいう場合は、しばらく放っておいた方がいいのか、「どうしたの?」と寄り添う言葉を掛けたほうがいいのか、迷ってしまいますよね。
高橋先生:喧嘩もそうですけど、いじけることだって子どもにとっては大切なことだと僕は思いますね。子どもが親に叱られて「いじけている」、「すねている」状態は、反論を聞き入れてもらえず「どうせわかってもらえない」と諦めの心境であったり、味方であるはずの親に共感されず、強い孤独感を味わっているのではないでしょうか。
I:だとするとついつい「救いの手」を差し伸べたくなってしまいますね。それは早合点です、と言われそうですが(笑)。
高橋先生:よくわかってますね(笑)。子どもが「いじける」ことって、そう悪くはないと思うんですよ。自分のしたことを内省し、深く考えているということですから。
それは物事をよく考えている瞬間であり、嫌な事があった時に自分自身で解決しようとしている証では。幼い子なら泣いたり暴れたりもするだろうけど、そうじゃないわけです。「いじける子」って、もっと成熟した段階にあるというか、実は思慮深いのかもしれません。
I:感情が育って物事を深く考えられるようになって、はじめて「いじける」ことができるようになるということですかね。
高橋先生:そうですね。僕も身に覚えがあります。同級生が束になっていわれのないことで馬鹿にしてきて、ものすごく悔しい思いをした。そういう時は「いじけて」自分の身を守るしかない。あの悔しさは言葉にはできないものですね。「ここで言い返してもしょうがない。でもあれは言いすぎだと思うし、僕はそんな人間じゃない…」といろいろ考えた。その葛藤から、内省を通じて多くのことを学ぶことができる。親からの注意でいじける場合も、それと基本的には同じだと思います。
I:親から見ると、叱られた後でだんまりになって納得できていないように見えても、本人の心の中では、いろんな内省を試みているのかもしれない。様々な相談で先生は「干渉すべきではない」とおっしゃいますけど、このケースでも同じですね。親はまず様子見することが基本。
高橋先生:そうそう。もっとも、そういう“葛藤”は本人でも意識できるものではないし、ましてや他人には見えないものです。わが子に「いじけているな」と感じたら、心の成長過程と受け止めて見守ってあげてください。それで十分です。
同じ家族として育つ兄弟姉妹は、喧嘩もするけど一番分かり合える仲間でもあるはず。子どもたちがお互いの存在を大切に思い、いい関係を築くために、親がすべきは“そっと見守る”こと。「いじける」子に対しても、とことん諭して親に従わせようとするのではなく、心が育っている瞬間なんだと受け止めてそっと見守る”のが正解なようです。
今回先生が教えてくださったのは、親として優しくも厳しい視線を感じさせつつ、いちいち干渉するわけではない微妙なスタンスで子どもの成長を見守ることの大切さです。子どもを健やかにたくましく育てていくために親として身に着けておきたい子育ての基本姿勢ですね。