――「非認知能力」をしっかり育てれば、その後に「認知能力」を高めることができるという点について、もう少し詳しく教えてください。それはどういうメカニズムなのですか?
浜口:赤ちゃんの頃は、自分のペースで心地よくいられること、興味の湧くことに手をだしたりすることを、親や保育者などに肯定的に受け止められると、自己信頼感をもてるようになり、安心して外の世界に関心を広げていくようになります。
1~2歳は、自我が育つ時期ですから、大人に反抗することも多くなりますが、その中でも、信頼している親や保育者が望むことに応えようという気持ちはいっぱいあります。
3歳~5歳頃になると、友だちと協調して楽しむことや周りの世界への探求心が大きく育ってきて、「友だちががんばっているから自分もがんばろう」とか「もっとやりたい、やり抜きたい」と思えるようになるんですね。
そうした“基礎”があるうえで小学校に入学し、学習やスキルの習得を始めるにあたり、学習に対して幼児期に培ってきた体験や好奇心の枠組みを活かすことができる――大雑把に説明すると、そういうメカニズムです。
幼い頃の学習能力の差は後からでも追いつける
――学習能力については、個人差が大きいですよね?
浜口:それはそうですね。もともとの資質で早くから学習能力の高さが現れる子はいます。でも10歳未満の子どもたちの早い遅いは、長い人生の中で何の意味があるのでしょうか。「非認知能力」がちゃんと育っているとその差は縮まっていって、追いつき追い越すこともあるでしょう。
逆に、「非認知能力」を伸ばす機会が奪われた子どもの「認知能力」は、数値的に高く出たとしても、その子の人生を豊かにするためにその「認知能力」を使えるかどうか、私は心配になります。
乳幼児期にしっかりとした「非認知能力」の基盤ができていれば、学びの力だけではなくて、豊かな人間関係の中で逆境に耐える力も身につけているでしょうから、日常生活の中で起きる問題も自分なりの解決方法を見つけて乗り越えていけるんだと思います。
――ありがとうございました。習い事や教材など、世の中には「学び」に関するコンテンツが溢れていますが、そうしたことを早くマスターさせることより、人として大切な感情や気持ちをいかに育んでいくかが大切なことがよくわかりました。ママ・パパはどのようにわが子の「非認知能力」を育むことができるのかなど、このお話の続きは〈後編〉で詳しく伺います。先生、引き続きよろしくお願いいたします。