「母国語に関してはみな一様に習得能力が備わっていますが、第二言語に関してはそのとおりではありません。実は、第二言語の習得に関しては遺伝による要因が7~8割を占めることが知られています。たとえば、留学してわずか3か月で言葉を覚えられる人がいますが、そういう能力が遺伝子で決まっている、ということです」
英語を話せるようになる人と、苦手とする人がいるのは、勉強の仕方が悪いとか本人の努力が足りないということではなく、純粋に言語習得が得意な遺伝子を持っているか否かだと池谷先生。遺伝子の問題だとすれば、日本語を母国語とする親の元に生まれた子どもの場合、親が言語習得能力の高い遺伝子を持っていなければ、子どもも難しいということになります。そう聞くと、ガックリ肩を落とすお父さんやお母さんも少なくないはず。
「私もその遺伝子は持っていないので、英語は話せません」と、池谷先生は笑いながら続けます。
「といっても、ほとんどの人が何も子どもにネイティブ並の英語力を求めているわけではないと思います。第二言語としてのある程度のレベルでの英語力として考えた場合、言語習得が得意な遺伝子を持っていなければ“10歳までが肝心”。一般的に人は10歳で言語感受性期が終わるので、脳が柔らかい10歳くらいまで第二外国語の勉強を継続しておけば、その後あまり使わなかったとしてもさほど衰えません」
親自身の英語力もふまえ、子どもがどこまで英語ができるようになることを目指すのか、それぞれのケースで考える必要がありそうです。